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コラム 2015.11.19

#53 前田優子(十中八九)


子どもの頃から「詩」が好きでした。書くのも書いてましたが、読むのがほんとに好きでした。そのきっかけは小学校の国語の教科書にのってた、草野心平の「春のうた」だったと記憶しています。けるるんくっく。なんじゃそりゃ。ってかんじで、ひきこまれていきました。心平さんがいわき出身だということを知るのは、それからうん十年後になります。

いわきにはじめて来たのは、15年くらい前だと思います。最初の勤め先だった「鼓童」が、いわきの民俗芸能「じゃんがら念仏踊り」をベースにした作品を初演するツアーで、平市民会館を訪れました。地元でのお披露目はほんとうに緊張するもので、お客様の反応に耳をすませながら客席の一番後ろでドキドキと見守っていたことを今もはっきり覚えています。でもそれから数年後、その場所に新しく建設されるホールに自分が勤めることになるとは、そのときには予想しようもありませんでした。
...というわけで、現在私はいわきにいます。この夏で、9年目に入りました。
いわきアリオスに勤めるまではずっと公演ツアーに関わる仕事をしていたので、自分がひとつの場所にとどまる仕事に就くなんて、果たして大丈夫なんだろうかと不安でした。体の中を吹く風が止まり、窒息してしまうんじゃないかと...でも杞憂でした。いわきは本当にひろいまちで、開館当初からアウトリーチ事業「おでかけアリオス」を担当していた私は、年中旅をしている気分でいられました。海辺のまち、中山間地域、街なか、そんな言葉では分類しきれないほど訪れる地域それぞれに個性があり、魅力的な人々が住んでいて、美味しいものがあって。飽きるひまがない、どころか、大好きになってしまいました。

 震災と原発事故のあと、ヒステリックなエネルギーが飛び交う中で、直感的に思ったのは「子どもたちを守らなくては、大切に育てていかなくては」ということでした。放射能による影響ももちろんでしたが、それより心配なのは、さまざまな距離感、さまざまな規模で身の回りに起きる「差別」に、しっかり自分で対応できるようなサポートをしていかなければと。そういう気持ちがほぼ反射的にでてきたのは、広島に生まれ育ったことも少なからず影響していると思います。
 無知や無理解のまま流されないこと。
 自分の意見を持てるまで調べ、考え、表現できるようになること。
 違う考えも耳を傾け、尊重すること。
わたしが高校三年のとき、担任が話してくれたことです。
後で思えばそれは、アンサンブルの基本ルールとまったく同じだと思いました。これから、そういうことをみんなで共有できるような企画を発信していこう、と思いました。

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さて、今年からAAFに参加させていただいている「十中八九」は、2013年5月にいわきアリオスで開催された「いわきアリオス5周年大感謝祭!渋さ知らズ大オーケストラ」というワークショップ&ライブ企画をきっかけに集まった有志により、その年の9月に結成したパフォーマンスグループです。音楽、美術、ダンスの3チームにより構成され、現在、高校生から50代までの約25名のメンバーで活動しています。
結成当初から、いわき駅前の商店街のなかに拠点を確保させてもらい活動をはじめられたのはラッキーなことでした。スタジオにこもって音づくりをし、ライブハウスで音楽好きな人だけに聞いてもらうんじゃなくて、商店会のおじさんたちに「お前たち今度は何やんだ〜」とか声かけてもらったり、閉店間際にお肉屋さんで唐揚げおまけしてもらったり(笑)しながら、まちなかでパフォーマンスを展開することで、幅広い年代の人たちに出会うことができ、面白いエネルギー交換ができているなあと思います。

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撮影:鈴木穣蔵

いわきの文化資源や、たわいもない雑談から生まれてくるあれこれをネタにつくりためていた作品を、今年5月にまとめてレコーディングし、8月に初めてのアルバムをリリースしました。きみたちの個性を、外に向けて発信する時期が来ているんじゃないか、という不破大輔さん(渋さ知らズ ダンドリスト)の提案からでした。最初はびっくりしました、しかもインディーズとはいえ一般流通... 拙さは目立ちますが、アルバムのプロデュースを引き受けてくださった不破さん始め、
たくさんのプロの方々に助けていただきながらなんとか録り終えました。音には聞こえてきませんが、ダンス班もレコーディングに参加しています。ジャケットはメンバーみんなで描きました。愛着ある一枚が出来上がりました。商店街にはCDショップがないので、楽器屋さんやレストラン、洋品店、雑貨屋さん、酒屋さん、バーなどにおいていただいています。

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「十中八九」ジャケット写真 撮影:白土亮次

リリース後、地元の方に「十中八九って、これからどうなっちゃうの、どこへ向かうの」と訊かれることが続きました。...いやあ、どうもなりません、どこへも向かいません。メンバーみんなそれぞれに生業もあるし。大好きないわきで、面白いと思うこと楽しいと思うことをただただ必死でやってくのが、好きなんです。
...そんなやりとりをしながら、「地方」にいる人が、なにかにトライしたり変化のある行動をとるってことには、地元を離れて遠く(たとえば東京とか)へ行く、行ってしまう、っていうイメージがあるんだなって、あらためて感じました。
でももし奇跡が起きて、CDがたくさん売れたり、注目されることがあったとしたら、私たちがどこかへ行くんじゃなくて「いわきにぜひ観にきてください!」ってお誘いしたいな、って私は思っています。...なんて大きなことを言ってみたりして。でもわりと本気です。
11月、AAF報告会がいわきアリオスで開催されるのに合わせて、レコ発ライブをやる予定ですので、ぜひお運びください。

十中八九 オリジナル1stアルバム「十中八九」リリース記念LIVE
2 DAYS PERFORMANCES
Day1:不破大輔ベースソロLIVE with 十中八九アンプラグドセッション
2015年11月22日(日) 19:00開演(18:30開場)
アートスタジオもりたか屋 2階(福島県いわき市平字三町目34)
出演:不破大輔(ウッドベース)・十中八九(小編成)
Day2:「十中八九」リリース大感謝祭LIVE
2015年11月23日(月祝) 17:00開演(16:30開場)
The QUEEN (福島県いわき市 平字白銀町9−1 B1F)
出演:十中八九 with 不破大輔(ダンドリスト)

チケット
1day ticket 各1,500円(ドリンク別)
2days ticket 2,500円(ドリンク別) ※10名限定!
お申込み・お問合せ 
十中八九 事務局
  090-8720-0487(前田)
  1089iwaki@gmail.com


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前田優子 MAEDA Yuko
広島県生まれ。エリザベト音楽大学器楽科卒業。1993-2003、佐渡島に拠点を置く太鼓芸能集団「鼓童」国内制作部在籍。2004-2007、コンサート企画制作およびアーティスト制作(ショーロ・クラブ、谷川俊太郎・谷川賢作、DiVa ほか)をフリーランスとしておこなう。2007年7月〜 いわき芸術文化交流館開設室より参加、現在に至る。
いわきアリオスでの業務のほか、なこそ復興プロジェクト、パフォーマンス集団「十中八九」の各事務局に在籍。