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レポート 2015.10.18

2015交流支援プログラム レポート10 Y-SEMI Project実行委員会→Maebashi Works


AAFネットワーク独自の交流支援プログラム、2015年度、10番目のレポートです。

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<開催概要データ>
[企画名]タマシマ・ヨコハマ × マエバシミーティング
[実施日] 2015年9月20日(日)
[招聘者]Maebashi Works【群馬県前橋市】
[訪問者]Y-SEMI Project実行委員会【神奈川県横浜市/岡山県倉敷市】

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<レポート>
Y-SEMI Project実行委員会が運営するスペース(ギャラリーサイトウファインアーツ)は、横浜のみなとみらいからほど近い黄金町とよばれる地域にあります。かつては小さな風俗店が数多く立ち並ぶ「行ってはいけない」といわれる場所でしたが、2008年に京浜急行電鉄と横浜市の協力により高架下に文化芸術スタジオが建設されたのを機に、アートを生かした新しいまちづくりが展開されています。現在はリノベーションされた建物で多くのアーティストが滞在制作をしていますが、黄金町エリアマネジメントセンターが主導となり定期的にオープンアトリエを行っていたり、横浜トリエンナーレの時期に併せて大きな企画を行ったりしています。Y-SEMI Project実行委員会(以下YP)もそちらに参加しています。

今回の交流支援プログラムで私たちは、自分達が運営するスペースに最も近い(と思われる)環境にある団体を訪問しようと決めました。それは、運営に際し抱えている問題や地域との関わり方など、環境が似ていればそれだけ参考になることも多く、問題解決の糸口も見つかりやすいのではと考えたからです。
いろいろ調べた結果、商店街のなかにスペースをもち、アートセンターが近くにある「マエバシワークス」に決めました。
前橋市の中央通り商店街の真ん中に、マエバシワークス(以下MW)はあります。2015年9月20日の日曜日、この日はちょうど「マエバシワークスオープンスタジオ2015」の開催中でしたので、まずはご対応いただいたカナイサワコさんや木暮伸也さんの作品を見せていただきました。

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写真1 木暮伸也さんの作品(マエバシワークス内)

MWの1階はスタッフルームとフリースペースがあり、今回はオープンスタジオの展示会場として利用されていました。2階はシェアアトリエとキッチン・バス・トイレ、3階はメンバーの住居とレジデンス用スペースがありました(この時はレジデンス作家が滞在中でした)。さらに屋上もあり、展示やパフォーマンスの場所としてもたびたび利用されるそうです。
MWはアーティストランのスペースで、8名のメンバーが主に制作のために使っています。1階のフリースペースは、元は店舗だったこともあり天井が高く、ほどよい広さでした。
ちなみに、YPは2名で管理しています。物件も1階は展示(制作)スペースとミニキッチン、2階がバス・トイレと寝泊まりできるスペースを備えていますが、小さい場所なので日常管理は1人で十分できます。

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写真2 ギャラリーサイトウファインアーツ

その後、MWのカナイさんと家入健生さんに周辺施設を案内していただきました。ya-ginsをはじめとしたギャラリーが点在しており、さらには(公立美術館である)アーツ前橋が歩いてすぐの距離にあります。

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写真3 ya-gins
 
町歩きをする中で、MWの地域と連携した取り組みについて教えていただきました。アーツ前橋ができたことで、お客さんが周辺のアート施設にまで足を運ぶようになったそうです。たしかに、それぞれの施設が「ここまで来たからついでに...」と思える適度な距離なので、お散歩がてら観て回るには最適です。
とはいえ、地方都市の衰退という側面から考えると、ここも例外ではありません。アーツ前橋はもともと商業施設をリノベーションした建物ですし、商店街も最盛期の賑わいにはほど遠いと思います。しかし、その衰退を食い止める手だてとしてMWのような商店街を盛り上げてくれる若いグループや、大学や学生が主体となって運営する団体に場所を提供するという動きがみられます。昼間人口を増やすための活動への理解はもちろんのこと、本当に必要とする施設に対し自分達も協力して作り上げていくという姿勢は、まちづくりに市民の方が積極的に参加されている証だと思います。
 
一方、YPの周辺にはアーティストのスタジオが数多くあり、大きな施設としては横浜美術館やBankARTスタジオなどがあります。横浜市は「クリエイティブシティ・ヨコハマ」という文化事業を行っているので、その規模も内容も前橋とは比べものにはなりませんが、それぞれの施設どうしの連携が実感できないので、そこは今後の課題だと認識できました。

MWとYPの最も大きな違いとしてわかったのは、建物の前の道路です。YPの建物の前はさほど道路幅も広くないのに頻繁に車が通るので、自転車を置いておくのもままなりません。そのかわり京急電車の高架がすぐ目の前という特殊な環境には、高架下を利用したスタジオがあり近所の子ども達も集まる「かいだんひろば」という面白い場所があります。

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写真4 黄金町のかいだんひろば

ちなみに、MWの建物は商店街のアーケード内にあるので、傘は要りません。道幅が絶妙な広さで、店の前にテーブルセットを置いても通行の邪魔にはならないのに、両側の店が分断されるほどでもありません。昔ながらの「縁側で近所の人達とコミュニケーションをとる」という行為がこちらでは自然に行われていました。私たちが訪ねていった時ももちろんテーブルセットは大活躍。打ち合わせも接待も通りがかりの人達との気軽なおしゃべりも全部ここで行われます。羨ましい限りです。

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写真5 マエバシワークス前の商店街
 
そして、MWからほど近くにある ya-gins は、ギャラリーとしての機能もさることながら地域のアート関係者のサロンとしても重要な拠点です。夜になるとみんなが集まってきて一緒にご飯を食べることも多いそうで、前橋のアートコミュニティがここで形成されているというのを実感しました。もともと、MWのメンバーにはアーツ前橋の学芸員の方もおられるなど横のつながりは既にあるのですが、前橋の新しいアートNPO作りにも関わるなど、街中のアート活動を継続するためにいろいろ尽力されています。

今回の訪問で、活動の立地や活動に関わるメンバー、その目的によって解決しなければならない課題や得られる成果が全く異なることに気がつきました。また、MWのみなさんが、地域の人とアート施設とをつなぐ難しい立ち位置にありながらも丁寧に活動されておられることに感心しました。

最後に、この交流プログラムでは、齊藤等(YP)と家入健生さん(MW)が数年ぶりの再会を果たしました。2人はBEPPU PROJECTで、あるプロジェクトのオープニング前夜に一緒に徹夜作業をした仲だったとか。いろいろな場所へ出向き培った経験は、次の新しい場を作るヒントになるだけでなく、人脈づくりのきっかけになるということがよくわかるできごとでした。

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写真6 マエバシワークス正面

黄金町では10月1日から「黄金町バザール2015」がスタートしました。今年度のバザールのテーマは『まちのなかにあるアート』です。地域にアートはなにをもたらすことができるか、今回の交流プログラムはこの問いに改めて向き合うきっかけを与えてくれたように思います。

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<タイムテーブル>
◎2015年9月20日(日) 
14:00-15:30 マエバシワークス館内見学および説明
15:30-18:30 アーツ前橋など周辺施設の見学および説明
19:00-20:10 ya-gins(ギャラリー)主催の「秋刀魚とホルモンを食べる会」に参加


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<執筆者プロフィール>
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加藤さとみ KATO Satomi
1974年 名古屋市生まれ。合同会社モッコ代表。
Arts Audience Tables ロプロプ(2011年〜)の立ち上げに関わったのを機に、本格的に〈アートを仕事に〉を目指し、各地のアートプロジェクト等の手伝いをしながら住まいを転々とする日々を送る。
AAFに関する活動としては、名古屋のArts Audience Tables ロプロプ(2012年よりAAF参加)/倉敷のグリーンファブラボ玉島β(2014年よりAAF参加)/横浜のProject YSEMI実行委員会(2015年よりAAF参加)の運営にそれぞれ携わっている。
2015年7月にアート系のマネジメント会社 モッコを設立。