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レポート 2015.09.28

2015交流支援プログラム レポート09 来たるべき田楽研究会→NPO法人 BaRaKa


2015年度、9番目のレポートです。

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<開催概要データ>
[企画名]チャンココと五島神楽に関するフィールドワーク
[実施日] 2015年8月13日(木) ~ 16日(日)
[招聘者]NPO法人 BaRaKa【長崎県五島市
[訪問者]来るべき田楽研究会【神奈川県小田原市

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<レポート>
2015年8月13日から16日まで、〈来たるべき田楽〉研究会の井関大介、鎌田華織、斉藤成美の3名は、九州長崎の離島、五島に行って参りました。
〈来たるべき田楽〉研究会は民俗芸能と現代人の新たな関係の模索を活動内容にしており、BaRaKaの「チャンココ」に関する活動は地元の女性による民俗芸能の捉え直しとして非常に興味深く、実地に取材し、意見交換をしたいと思ったためです。

滞在中はNPO法人 BaRaKaの片岡優子さんに案内をしていただきました。同氏の運営する「たゆたう。」というイタリアンレストランの建物内にある、将来的にゲストハウスにするスペースに泊まらせていただきました。
「たゆたう。」では、コミュニティの拠点となるようなお店作りをされていて、映画上映やコンサート等もしているそうです。
滞在中は全ての日程で晴れ、しかも観ようと予定していた念仏踊りが車の遅れなどで間に合わないかも! と思っても、たまたま開始時間が今年は遅くなったとか、フェリーが増発になった、などのラッキーが重なり、ミラクルな滞在となりました。

そんな五島独自の念仏踊りはとても興味深いものでした。
福江地域の念仏踊りの総称「チャンココ」は、お盆になると初盆の家の前や寺院や墓地で踊られます。特徴的な大きな頭飾りと腰みのをつけた男性達が太鼓をたたき、または鉦をリズミカルに鳴らして、念仏やかけ声とともに踊られます。鉦の音はかなり遠くにも響き渡ります。15日には、その鉦の音を頼りにチャンココを捜索し付いていって見学したりもしました。

五島には念仏踊りが地域ごとにあり、
・チャンココ(福江)
・カケ(玉之浦)
・オネオンデ(富江)
・オオモンデ(嵯峨島)
と、名称が地域ごとに違います。しかも地域内でいくつかの異なった踊りがある所もあります。

元は一つの踊りだったという説もあるそうですが、私が観た3つの念仏踊りのうち、全て振りも衣装もリズムも微妙に違い、時の経過と共に地域ごとに発展しながら伝えられてきたようでした。

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玉之浦の寺院にて「カケ」

興味を惹いたのは、それぞれの踊りの違いと、違いの中に見える共通性です。
例えば、「オオモンデ」の衣装でみられた頭の後ろの長い2枚の布は、反る動きにとても映えます。「カケ」には七夕を思わせる大きな頭飾りがあり、頭を水平にできるような動きや回転が多いようです。下大津の「チャンココ」では、踊り手と鉦をたたく人と観ている地元の人達との間でかけ声が多く交わされます。

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嵯峨島の「オオモンデ」民家前にて

しかし共通してあるのは、死者の魂を慰めたり住んでいる土地を大事にしたり、一日中踊り廻る踊り手を地域の皆が差し入れなどで気遣ったり、初盆の家を慰めたり、お盆に協力して死者を迎える気持ちなんだろうと思いました。
現代では死者や魂に対する概念が、踊りが出来た頃とは違うかもしれないけれど、もしかしたらお盆にこの念仏踊りをやることで、そこに住まう人々の営みの中に何か思い出すこともあるのかな、とそんなことを思いました。

BaRaKaの片岡さんが女性のチャンココをやろうと思ったのも、五島の地域興しをするなら地元に昔からあるものや、五島ならではのものをやりたいという熱い想いがあるからこそ。地元を大切に尊重しながら、様々な文化の刺激や交流の機会をつくり、新しいものづくりや芸術から、人々の生活に繋げていく。片岡さんや五島で出会った人達と話し、そういう循環をどう活き活きと楽しんでできるかを考えているように感じました。『五島海のシルクロード芸術祭』など、今後の活動を応援していきたいと思います。

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半泊浦の佐藤さん宅にて交流会

また、五島にはキリスト教の教会が多くあり、神道や仏教などはもちろん、日本以外にもアジア諸国の影響もある場所なので、次回来る機会があれば、そうした歴史的背景にも、もう少し踏み込んでリサーチしたいとも思いました。

最後に、片岡さん始め、16日の交流会の会場を開いてくださった佐藤さんご夫妻、宮﨑先生一家、烏山さん、一乗・創造の谷プロジェクトの朝倉さん一家、滞在中に出会った皆様、そしてAAFネットワークの皆様及び交流プログラムを支えてくださっている全ての皆様に心から感謝申し上げます。(斉藤成美)

◎参加者コメント1 鎌田華織
典型的都会人の私にとって、地元愛など皆無で、五島の片岡さんの地元の伝統への想いから来る創造への意欲、そこにまず感銘を受けた。
守るだけでなく攻める!...そんな感じの地元芸能への愛。
それと、30年以上前に輸入された他地域の踊りに対して『でも、30年経てば、それも伝統になっていくのかもね』と言った言葉。
私がこれからやろうとしていることは、今までの私とは関係のなかった小田原と言う場所で、今まで全く知ることもなかった『田楽』と言うキーワードで何かを創造すること。
『伝統』とは何か?『新しい』とは何か?
改めて突き付けられた、有意義な時間でした。

◎参加者コメント2 井関大介
期待通り、有意義な見学と交流ができた四日間だった。
〈来たるべき田楽〉は「民俗芸能」という語を用いつつも、当初よりその概念自体を疑ってかかる活動ではあったが、五島の念仏踊り群からはこれまで会で見てきた芸のどれとも異なる社会性があり、保存するにせよ、再創造するにせよ、共時的機能と通時的文脈の双方からその芸の特質を知らねばならないとの思いを強くした。
また、一度は東京で働いていたUターン者であるNPO法人BaRaKaの片岡氏によるチャンココ再創造の試みは、Jターン者である自分(和歌山→東京→小田原)と似て非なる、あるいは非ながらなお似た困難を抱えていることがわかり、これから増えるであろう(増えるべき)U・J・Iターン者が地域の伝統文化とどのように関わっていくのかというモデルの不在と、それをこれから我々が新たに創っていかねばならないのだという時代性を感じさせられた。

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<タイムテーブル>
◎2015年8月13日(木) 
・福江市街地にて「チャンココ」の門付けを観る
・富江の墓地にて「オネオンデ」を観る
◎8月14日(金) 
・玉之浦の「カケ」を観る(寺院、墓地にて舞を見学)
・大瀬崎断崖(灯台)、井持浦教会、大宝寺、荒川周辺を見学
・嵯峨島の「オオモンデ」を観る(寺院、墓地、初盆の家にて舞を見学)
・高浜などを見学
・池田町にて石田城跡、城山神社を見学
・たゆたう。にて片岡氏の活動についてのインタビューと意見交換、今後の協力関係を築くための打合せ
◎8月15日(土)
・奥浦町にて堂崎教会、樫の浦にてアコウの巨木を見学
・下大津の「チャンココ」を探索、観る(初盆の家、墓地、寺院にて舞を見学)
・たゆたう。にて片岡氏と打合せ
◎8月16日(日)
・半泊浦の佐藤さん宅にて地元の人達および一乗・創造の谷プロジェクトのスタッフとBBQで交流
・五島神楽の稽古の見学予定が中止となったので、武家屋敷、上大津周辺、岩川、住吉神社などを見学
・たゆたう。にて片岡氏と談話

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<執筆者プロフィール>
Saitou-photo.jpg
斉藤成美
振付家・ダンサー/デザイナー。日芸デザイン学科卒。ダンス留学@神戸1期生。現在は踊りを農作業や日常動作などを通して再考中。来たるべき田楽の収穫祭(12月13日)に向けて、田んぼに関する踊りを制作予定。
鎌田華織 
1974年東京都新宿区生まれ。『創造』ばかりしてきた一般人。
『創造』したモノ...漫画・編み物・シナリオ・小説・ダンス振り付け等々。
現在、伝統をそのまま受け継ぐモノをやっている為、創造をする場所を得るべく『来た田』に寄生。
井関大介
研究者(宗教学)。東洋大学・清泉女子大学非常勤講師、東洋大学井上円了研究センター研究助手。
院生時代から小田原の田んぼでの自給自足を始め、斉藤成美らと共に〈来たるべき田楽〉立ち上げ。