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レポート 2015.08.21

2015交流支援プログラム レポート02 あおもりNPOサポートセンター→大阪七墓巡り復活プロジェクト


AAFネットワーク団体のスタッフによる「地域間交流支援プログラム」。活動拠点やその地域の空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行うことができるように、と始まりました。最近では共同プロジェクトの制作なども行われています。

今回は、「大阪七墓巡り復活プロジェクト」を訪ねた、NPO法人あおもりNPOサポートセンター、斉藤雅美さんによるレポートです。

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<レポート>
2016年3月の北海道新幹線開業に向け、青森の観光状況は変化の時期を迎えています。青森県内に新設される新幹線駅や、開業を契機とした津軽海峡交流圏形成に向けた盛り上がりの反面、豊かな観光資源を生かしきれていないという焦りや、2010年に八戸駅--新青森駅間が開業した喜びも束の間、観光客は北海道を目指し、通過県となってしまうのではないかという危機感を感じています。この問題に対し行政や企業が誘客にターゲットを絞った様々な取組みを始めている一方、私達地域に根ざしたアートプロジェクトに携わる立場から、「見えざる地域文化」を掘り起こしてアートツーリズムに組み立てる観光家・陸奥賢さんの企画や発想の着眼点などを伺い、青森独自の新しいアートツーリズムを考えようと思い、今回の交流プログラムを実施しました。

御堂筋線東三国駅で陸奥さんに出迎えていただき、今回の交流企画を行うスペース「社会実験塾 逍遙舎」を拝見しました。元々お好み焼き屋さんだったというこの場所、逍遙とは「あちこちをぶらぶら歩くこと。散歩。そぞろ歩き」。観光家陸奥賢さんの活動拠点の一つとして何ともしっくりくる名前です。「俺ベス10!」「非常食パーティー」「まわしよみ新聞」「直観讀みブックマーカー」「当事者研究スゴロク」など陸奥さんの考案した企画を実施し、様々なジャンルの人達が集う「社会実験塾」として活用されています。

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大阪と青森を観光という目線で考えるにあたり、まずは大阪の街を歩いてみようということで、市内を逍遙。木津卸売市場、まちライブラリー@大阪府立大学、西成区あいりん地区、新世界、通天閣、法善寺横丁、道頓堀、スタンダードブックストアなどなど、気温36℃の炎天下ではありましたが、初めて歩く大阪の街はとても刺激的で楽しく、The 大阪的な観光スポットと、ガイドブックでは廻ることができない場所を織り交ぜたコースを、陸奥さんの解説で歩きました。

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大阪七墓巡りの場の一つ「千日前」は、江戸時代に作られた千日墓地と呼ばれる大規模な墓地跡であり、死刑場や遊郭、芝居小屋などが置かれて開発された場所です。村落共同体から追われた流れ者や罪人、遊女、流民、芸能民などが数多く集まり、そのコミュニティの融合から、新しい大阪の都市芸術が生まれてきたという背景があります。今ではボーリング場や飲食店が建ち並ぶ娯楽街であり、墓地跡の名残は全くありません。ここに眠る無縁の仏様を供養する祭礼を復活させたのが「大阪七墓巡り復活プロジェクト」です。

19時より逍遙舎において、交流企画「青森の新しいアートツーリズムを考える~大阪七墓巡りの方法論から~」を開催しました。今回、この企画に興味を持ってお集まりいただいた方々は、編集者や会社員、大阪七墓巡りの参加者、青森からは裂き織り作家、と不思議な集合体となりましたが、実にバランスよく会話が弾む楽しいメンバーが揃いました。

まずは陸奥さんより大阪七墓巡り復活プロジェクト(死生観光:死者と生者が出逢う観光・陸奥さんの造語)の誕生、成立、経緯、現在の課題などを説明していただきました。大阪の街、特に千日前を見た後だったので非常にイメージしやすく、大阪町衆が無縁の人・自分と関係ない人・他者である無縁仏供養のために鉦(かね)や太鼓をたたきながら、夜を徹して念仏回向して廻る、慈愛に満ちた行為であると同時に何やらお祭り騒ぎの体も有り、これを現代に復活させ様々なパフォーマンスで霊を慰めるというこのプロジェクトは、陸奥さんしか考えつかないだろうと改めて実感しました。

私からは青森における死生観光として、日本三大霊山の一つ、むつ市の恐山についてお話しさせていただきました。恐山は、地蔵信仰を背景にした死者への供養の場であり、下北地方では「人は死ねば(魂は)お山(恐山)さ行ぐ」と言い伝えられ、江戸期以前より地域の住民の信仰の対象でありました。集まった人々が死者を思い、念仏を唱えたり賽銭を投げたり、恐山大祭や恐山秋詣りにはイタコと呼ばれる巫女の元に多くの人が並び、死者の霊を呼び出すイタコの口寄せが行われ、正に死者と生者が出逢う場所として存在しています。また、五所川原市金木町にある川倉賽の河原地蔵尊には、未婚の男女の霊が結婚適齢期に達すると神様が夫婦として結びつけてくれるという伝説があり、大小約2000体の地蔵が祀られています。亡くなった子供の着物や遺品を地蔵堂に安置し、親族が毎年取り替えることで死者と生者が出逢う場となっています。

大阪七墓巡り復活プロジェクトの「死者と生者が出逢う観光」とは、単なる心霊スポット巡りやミステリーツアーとして観光誘客を売り物にするものではありません。その土地の歴史や風土に「光を中(あ)てる」という意味の「観光」と言えます。光を中てる人はその土地で暮らす人であり、時には外から訪れる人であり、またアーティストであったりします。今回、大阪七墓巡り復活プロジェクトの企画や発想の着眼点などを伺い、観光客誘致、賑わい創出といったベクトルとは別の切り口で、青森県独自のアートツーリズムについて企画し提唱することが、私達にもできるのではないだろうかと感じました。

さて、参加メンバーから大阪・青森の死生観光について様々な感想が述べられ、そこから派生したおしゃべりもまた盛り上がりました。その中で、「大阪春秋」の編集者の長山さんが大阪と青森の繋がりについてこんなお話をされました。
「青森県にある大阪屋という和菓子屋は、大坂冬の陣、夏の陣で豊臣家が徳川家に敗れてほろんだことをきっかけに、豊臣家の家臣が縁故を頼り、弘前の地に訪れその後創業したらしいですよ」。
この大阪屋という和菓子屋、私の祖父と叔父が勤め、社長夫婦は私の両親の仲人だという実に身近な存在であり、あまりに身近で「なぜ青森なのに大阪屋なのか?」という疑問を持ったこともありませんでした。偶然にもこの話題を提供していただき、予想していなかった展開に本当に驚き、出逢いに感謝しつつ、アサヒビールを片手に夜更けまで盛り上がった次第です。

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最後になりましたが、お忙しい中時間を割いてお付き合いくださった皆様、貴重な機会を与えてくださったAAF実行委員会と事務局の皆様に心から感謝申し上げます。

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<開催概要データ>
[企画名]青森の新しいアートツーリズムを考える~大阪七墓巡りの方法論から~
[実施日] 2015年7月29日(水)
[招聘者]陸奥賢(大阪七墓巡り復活プロジェクト【大阪市】)
[訪問者]斉藤雅美(NPO法人 あおもりNPOサポートセンター【青森市】)

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<タイムテーブル>
2015年7月29日(水)
 11:00 御堂筋線東三国駅にて陸奥賢さんと合流。
 11:30 逍遙舎を見学。
 13:00 大阪市内まちあるき。
 19:00 逍遙舎にて交流企画「青森の新しいアートツーリズムを考える~大阪七墓巡りの方法論から~」を開催。飲み会同時開催。

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<執筆者プロフィール>
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斉藤雅美 SAITO Masami
1968年青森県弘前市生まれ。あおもりNPOサポートセンター理事長。青森県警察職員を経て、2008年よりNPO中間支援組織として他のNPOを支援する活動の他、廃校活用事業・「AOMORI PRINTトリエンナーレ2014」事務局運営など、文化芸術と社会を結びつける活動を行っている。