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レポート 2015.08.14

2015交流支援プログラム レポート01 BaRaKa←震災リゲイン


AAFネットワーク団体のスタッフによる「地域間交流支援プログラム」。活動拠点やその地域の空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行うことができるように、と始まりました。最近では共同プロジェクトの制作なども行われています。

2015年、最初のレポートは、特定非営利活動法人BaRaKa (長崎県五島市)に招かれた、一般社団法人震災リゲイン(東京都港区)の相澤久美さんによるレポートです。

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<レポート>

2015年7月18日(土)に、特定非営利活動法人BaRaKaの片岡優子氏が運営する「たゆたう。」というイタリアンレストランにて、東北記録映画三部作の第一部『なみのおと』の上映会が開催されました。上映会の後には、この映画のプロデューサーでもある一般社団法人震災リゲインの相澤久美が会場の皆さんとお話をする時間が設けられました。
五島市で『なみのおと』上映会を開きたいと考えた意図を、片岡氏は以下のように綴っています。

「きらびやかな世界に憧れ故郷を出た自分は、長年東京で暮らしましたが、『何か』を見つけることができませんでした。自分の無力さを痛感し、戻った故郷で畑を耕していた半年後に震災の日を迎えました。
震災が起こって、私の心は本当に変わりました。パラダイムシフトです。モノに溢れ、きらびやかな都会に追いつきたかった自分の価値観が崩れ、自分が求めていた豊かさとは何だったんだ? これから私は何を思い、どう生きていくのかと、長い間自問自答し続けました。
五島は自然の災害が少なく、地震も今までほとんどありません。自然の力に守られている土地です。去年、アサヒアートフェスティバルの交流支援で福島のいわき市の『田んぼの記憶』TSUMUGUプロジェクト実行委員会代表、田仲桂さんを訪ねて交流した際に田仲さんが、ある方が『災害が起きない地域は、人々が助け合わなくなる』と言っていたとおっしゃったことが、頭から離れないのです。
災害のない安全な土地、五島で暮らす私たちは、果たして助け合って生きているのだろうか?と深く考えさせられました。五島に住んでいると震災に関する情報が極端に少なく、残念ながら関心を持つ人も少ないように思えます。そのことが私には心苦しくてしょうがありません」
 
東北から遠く離れた長崎県五島市のAAF仲間から、復興の過程にある東北へ寄せる思いを伝えられた時、改めてAAFのネットワークの意義について考えさせられました。様々な課題に対して活動するAAFの参加団体同士が、ささやかな繋がりの元、それぞれの状況に対して想像力を駆使し我がことに置き換えようとする試み、支えあおうとする意識、またそこから得られる学びは貴重です。

震災後4年以上が経過する東北も様々な課題を抱えていますが、課題を抱えているのは日本全国どこも同じでしょう。小さな島国日本、しかし巨大な人口を抱え複雑に絡み合う現在の日本社会において、課題解決自体もその共有も容易ではありません。課題の居所すら確かでないこともあります。せめて確からしいのは、直接顔の見える個々人の間に編み込まれる関係から見出す、それぞれの課題に向かう姿勢くらいだと感じています。それぞれに孤独に課題に向き合いながらも、その姿勢が確認できるだけでも、又は互いにささやかな情報交換をできるだけでも収穫はあり、互いの土地に出向く機会をつくる交流支援プログラムは重要な取り組みだと感じました。五島で活動を続けることに対する片岡氏の様々なお話を聞き、考えさせられることは多くありました。

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当日会場には、約15名の五島在住の方々が映画鑑賞にいらっしゃいました。2時間22分という長時間の映画で、途中居眠りする方も見受けられましたが、最後までじっくりと鑑賞してくださった方も多く、これだけ離れた土地での東北への関心の強さに驚かされました。
上映後、残ってくださった6名ほどの方々のお話を伺うと、それぞれが、この特殊な手法で撮影された『なみのおと』を通して、東北での震災を遠くの出来事としてではなく、自らのこととして捉えてくれたことが伝わりました。今回は「聞くこと、語ること」についての場でしたが、「聞く」という態度を地方でちゃんと持つことの難しさと、難しいと思われることだからこその可能性を感じました。

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「今回『なみのおと』を上映し、震災にあわれた方々のお話や、相澤さんより仮設住宅で暮らす方々の体温のあるお話をみんなで共有できたことを第一歩として、継続して同じ日本で災害にあわれている方々のことを忘れないような活動をしたいと思います」

これは上映会後の片岡氏の言葉ですが、震災で被害にあった方々を忘れないような活動とは、震災からの学びを、五島の地でも活かしてもらえるものであってほしいと願います。いわきの田仲さんがいう『災害が起きない地域は、人々が助け合わなくなる』という事実が存在するならば、如何にそれを乗り越えられるのか? 豊かさが招く困難とはなんなのか?
目に見えない災害のようなものの存在はどの地にもあると思います。五島の歴史、生活文化をテーマに据え活動をされる特定非営利活動法人BaRaKaの片岡氏は、今後の取り組みの中でそれを明らかにされていくのかもしれない、と感じました。震災リゲインも全国の取材を通してこの「目に見えない災害」のような困難に向き合い続けていくので、片岡氏とのささやかな情報交換を継続したいと思います。

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片岡氏には、五島の島中をご案内いただき(美しすぎます!)、NPOの理事でもある、塩づくりをしながら半自給自足で暮らす方、同理事の息子の鍛冶屋さん、ほか様々な方をご紹介いただき、充実の二泊三日でした。片岡さんがゲストハウスにしたいと考えておられる建物に泊めていただき、こちらの改装の相談にも乗ってきました。ご案内いただいた片岡氏に、心より感謝申し上げます。

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<開催概要データ>
[企画名]『なみのおと』上映会+おちゃっこの会/「聞くこと、語ること」について
[実施日] 2015年7月18日(土)
[招聘者]片岡優子(特定非営利活動法人 BaRaKa 【長崎県五島市】)
[訪問者]相澤久美(一般社団法人 震災リゲイン【東京都港区】)

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<タイムテーブル>
2015年7月18日(土)
 15:00~17:30 東北記録映画三部作『うたうひと』上映
 17:30〜18:30 「聞くこと、語ること」について>会場のお話を聞かせてもらう場
 会場:たゆたう。

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<執筆者プロフィール>
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相澤久美 AIZAWA Kumi
建築家。一般社団法人震災リゲイン代表理事。『震災リゲインプレス』発行人及び編集者。映像制作プロダクション・一般社団法人サイレントヴォイス プロデューサー。『島の色 静かな声』(2008)、『東北記録映画三部作』(2013)他。