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コラム 2015.06.19

#48 新見永治(パルルを支援する会)


パルルというのは名古屋市中区にあるスペースの名前だ。「パルルはまちである」と宣言していて、そこに集う人達を「住民」と呼んでいる。運営はリーダーを置かずにその「住民」たちが話し合いをしながら行っている。パルルとして掲げる特定の目的といったものはなく、住民がそれぞれの思いで集まっているだけだ。そしてそれが反映されて朧げに方向性(文化、風土)らしきものが生まれてくる。でも住民の顔ぶれも移り変わるのでその方向も一定ではない。こんな運営方法を始めてから、もう4年ほどになる。

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パルル住民の対話はこちらで行われています。誰でも自由に参加できます。

集う人を「住民」と、ある意味勝手に呼んでいるので、正確に何人いるのか分からないが100人前後といったところだろうか。話し合いをしながら運営している、と書いたが、100人の住民全員が常に役割分担をして運営業務をしているというわけではなく、ルール作りや経理や清掃といった作業に当たるのは4〜5名で、話し合いに参加するのは10〜20名くらいだ。それ以外の多くはイベントがあるときに遊びに来たり、本棚があるので読書したりお茶を飲みに来るような人達である。つまり関わり方もバラバラなのだ。でもこの人達みんなが等しく「住民」であり、これがパルルの核心の一つだと思うのだが、すべての「住民」が物事の決定に参加できるのだ!

と、ここまで悦に入って書いてきたのだが、皆さんはパルルがどんな場所かイメージできただろうか。割としっかりしたキッチンもあるので、普段は飲食を出している。知らないで立ち寄れば本がたくさん置いてあるカフェにしか見えないはずだ。普通スペースの説明をするとしたら、どんな店構えかだったり、そこで何が行われているかを話すだろう。でも僕は「パルルってどんなところ?」と尋ねられたら上のように仕組みを滔々と喋り続けることになる。これはまるで野球を知らない人に説明するのにルールブックを読み上げてみせるようなものだ。

パルルの面白さってどうやったら伝わるんだろう。そもそも面白がってもらえるんだろうか。自信のなさは減るどころか、日増しに強くなるばかりだ。

とにかくもっとパルルのことを知ってもらわなければと、いろんな門を叩いてみることにした。その中で2013年にAAFに応募してみて運良く採用された。そして参加してみたらAAFにもリーダーがいない!そんな集まりが他にもあるなんて!と嬉しい驚きだった。そして見渡すとここには自信と不安の入り混じった人たちが多くてどこか落ち着く。と安住の地を得たがごとくAAFに深く溶け込んでいったのだった。

いやいやいや、ちょっと待て。殻に閉じこもっている場合ではない。
どんどん外に向かって声を出しパルルの取り組みを知ってもらわなければならない。全ての組織が、みんなの対話で成り立つ世の中を作るのだ。学校も、会社も、町内会から日本国政府まで。

当たり前だと思っている組織のあり方を、見直してみよう。組織といえば、その目的や活動に目が向きがちだが、組織の仕組みにももっと光を当てよう。もっと柔軟に考えてみよう。

そのためにはパルルが仲間内だけの「まち」ごっこに終わらず、社会にしっかり接続していかなければならない。それにはクリアすべきいくつかの問題がある。例えば今のままでは法人化なんてできないし、スペースの賃貸契約も結べないし、銀行口座も作れない。リーダーつまり代表がいないから。だが、こんな壁にぶつかることでリーダーの意味がさらに見えてくる。僕たちはリーダー撤廃を唱えているわけではない。いろんなことをきっかけにして組織のあり方全体をみんなで話し合いながら見直す。これは目的地の定まっていない果てしない旅のようなものだ。思うように進まないし、立ち止まって考えたり試してみたりばかりしている。でも、そうして少しずつ前へ行く。
そういえばAAFの応募用紙にも団体代表者を記入する欄がある。一度これを廃止してみませんか。


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新見永治 SHIMMI Eiji
1957年京都市生まれ。1982年より名古屋市中区でスペース「パルル」の運営に関わっている。当初は新栄画廊というレンタル・ギャラリーとしてスタートし、現在は集団で運営するカフェ兼イベントスペースとなっている。2011〜2012年創設から関わった名古屋市長者町のアートセンター「アートラボあいち」の運営に携わる。あいちトリエンナーレ2013へプロジェクトFUKUSHIMA!の一員として参加した。