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コラム 2015.05.20

#47 大村みよ子(非公式物産展/パートタイマー)


2頭目の犬を迎える際に、ブリーダーに「性格の良い犬同士で掛け合わせたからね、この子も性格良いよ」と言われ、とても驚いたことがあります。さらにブリーダーは言いました。「生まれついての性格は変わらないからね」と。
 
本来は、人前に出たいという性格ではないのだと思います。
物心がついた時から「引っ込み思案」という評価は、欠点としてあらゆる場面で私についてまわりました。「大村さんは引っ込み思案だから損をする」と言われる度に、大きな声で発言のできる同級生は、きっと「損」をすることはないのだろうとうらやましく思い、私もそうなりたいと密かに言動を真似てみたりしたものです。成長ととも人前に出ることが苦にならなくなったのも、大人になり表現者の端くれとして活動することができるようになったのも、長年の小さな努力の積み重ねであると信じていた私にとって、先のブリーダーの説は全てを否定されたようでショックでしたが、とはいえそれは犬の話。人間はやはり「氏より育ち」の生き物なのではないかと考えながら子犬を連れて帰ったことを覚えています。
 
それから6年が経ち、件の犬は引っ込み思案な私が育てたにもかかわらず、ブリーダーの言う通り社交的で優しい犬に育ちました。
一方、私は美大卒業後から続けていた彫刻作品の制作をやめ、非公式物産展という名前で活動するようになりました。
 
「自分の私的な旅の経験を展覧会形式で発表する」という、私の作品的な位置付けでスタートした非公式物産展ですが、昨年からは、参加者が「旅」にまつわる何かを持ち寄り集う〈非公式物産展の地球のあるき方〉と、旅先での思い出の味を記憶と勘で再現する〈キッチンうろ覚え〉の参加型の催しも開催するようになりました。〈あるき方〉と〈うろ覚え〉では、「参加者の興味や関心・特技・アイデアを引き出す手段として『旅』というキーワードを用いること」と「器用な人も不器用な人も、アーティストもそうでない人も、対等に表現できる場所にすること」の2つを心掛け実施しています。

「旅」を催しのテーマに掲げているせいか、主催者である私は相当な旅上手なのだろうと思われることが多々あります。ありがたいことに、旅行の機会も以前より格段に増えました。しかしそれは、旅行中もしくは旅行後に何かをするために行く旅であり、ひとりで気ままに歩いたり、家族や親しい人と行く旅にはない「気の重さ」があります。目的を遂行するために行く旅--つまり非公式物産展として行く旅は上手くできないことの連続で、それを思うとなんとも気が重くなるのです。初めて訪れる土地は期待よりも不安のほうが大きいですし、面識のない人や親しくない人にお世話にならなければいけない旅の前などは、緊張で気分が悪くなることもあります。人と打ち解けるのにも時間がかかります。そんな時、すっかり忘れていた「引っ込み思案」といわれた子どもの頃の自分を思い出すのです。自分はそこそこ上手くデキる人間になれたと思っていたけど、結局子どものころと全然変わっていない...。「生まれついての性格は変わらない」というブリーダーの言葉は、やはり正しいのでしょうか。上手くできないことも気の重さも、性格だから仕方がないと諦めれば、ちょっとは楽になるのでしょうか。
 
何度やっても旅や催しの前はお腹が痛くなったりしますし、ネガティヴなことばかり考えて、やめればよかったと思ったりもします。それでも「気の重さ」を乗り越えた先にある景色のことを想像すると、やめることができないのです。それほど得意ではない「旅」を主題に選んでしまったのは、子どものころのあの散々な評価に対する私なりの抵抗の表れかもしれません。

さて、次の旅先がどうやら決まったようです。
今度の旅も催しも、行けば行ったで、やればやったで、楽しいことが必ずあるよ!と自分に言い聞かせ、そろそろ準備をはじめようと思います。


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大村みよ子 OMURA Miyoko
1973年生まれ。東京都千代田区出身。1998年武蔵野美術大学卒業。
東京・神保町のオルタナティヴスペース「路地と人」の立ち上げ・運営を経て、2013年より非公式物産展として活動を開始。現在に至る。
AAFへは2013年より参加。