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レポート 2014.10.01

2014交流支援プログラムレポート06「対話工房の対話ツールで輪を奏でる」


AAFネットワーク団体のスタッフによる「地域間交流支援プログラム」。活動拠点やその地域の空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行うことができるように、と始まりました。
今年も20プログラムが実施されます。
2014年、6番目のレポートは、対話工房の関わる宮城県女川町を訪ねた、輪音プロジェクト(大阪市)のカタヤマアキコさんによるレポートです。

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<レポート>

以前から、対話工房メンバーの海子さんには憧れに近い親近感を抱いていた。お人柄のよさからだけでなく、アートの専攻ではないところや建築業で生計をたてているという私との共通点があるからだ。そして「対話工房」の多彩なメンバーによる多様な活動についてもっと知りたいと思っていた。そんな時、京都で、被災地でもある宮城県女川町での活動について対話工房のプレゼンを聞く機会があった。「まず女川に来てほしい。そして地域の人と話をしてほしい」とのシンプルなメッセージが響き、とにかく行こうと決めた。

そして今回、輪音プロジェクトは「対話工房」を訪ねる機会をいただくことができた。
主な目的は「対話工房の対話ツールや活動地域を拝見する」「対話ツールのひとつ・仮設住宅でのキッチンカー運行を体験し意見交換する」「対話工房のアートを交えた活動・地域の人との対話の様子を知る」。

◎交流1日目
海子さんの住む宮城県名取市の駅で、親子での出迎えを受けた。これから2日間一緒だ。
幼稚園に通う娘さんはとてもパワフル。彼女の弾丸トークと人懐っこさのおかげで、私の緊張はふっとんだ。海子親子はよく一緒に行動していて、活動当初から対話工房メンバー皆で娘さんのケアをしていたとのこと。対話工房内で、家族のように助け合いながら過ごすメンバーの姿を想像した。

仙台市内の海子さんの事務所を訪問。
ちょっとした畑もあり、巨大オクラをもぎとって皆で分けて食べた。みずみずしく美味しかった。大きなガラス温室もあり、創造的スペースが多い建築設計事務所なのは、アートに関わっている人ならではと感じた。

いよいよ女川町へ。工事風景がいたるところに見える。
仮設商店街「きぼうのかね商店街」「女川コンテナ村」を訪ねる。私の希望でトレーラーハウスの宿泊施設、日本初の3階建仮設住宅にも立ち寄る。即時性重視から居住性向上へ移行するまちの様子を見ることができ、建築・まちづくりの視点で会話をした。まちが以前のように機能するまでにはまだ時間がかかるのがわかった。

対話工房メンバー岡さんの経営する仮設店舗「おちゃっこクラブ」訪問。住民の集う場でもあり、また多様な来訪者に開かれ、表現の場ともなっているカフェである。
女川町観光協会の鈴木さんもいらっしゃり、海子さん岡さんと3人で、秋刀魚収穫祭など、まちの魅力を教えていただいた。3人の間には信頼関係がしっかり築かれていて、対話工房の、まちとの結びつきを強く感じた。
その後、明日運行予定のキッチンカーを見せてもらう。一緒に活動すれば誰もが車体に名前を刻めるそうだ。これは一緒にしたことが形に残って、たとえ遠方にいても繋がりが感じられていい。私たちも明日経験できると思うと嬉しくなった。

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カフェギャラリー「おちゃっこクラブ」女川を一望できるテラスにて、女川町観光協会の鈴木さんと

夕食前に、まず海子さんから対話工房のなりたちを伺う。
「対話工房」は住民の創造性を支え、対話の場を再生するために誕生した。やがて、以前から共有空間を生み出していた様々な分野のプロ達が集まり、それぞれの職能や土地に根ざしながら、震災からの学びを自らの暮らしに置き換えることで、女川との距離の隔たりを越え、普遍的かつ新しい価値観をわかち合う仲間となったそうだ。団体の規模を大きくしようとか、人数を増やそうと思われたことは特になかったそうだが、今やメンバーは全国にいる。
意義深く想いのこもったプロジェクトには、全国から自然に創造的な人々が集まり繋がっていくのだ。

続いて食事処へ移動。女川の自慢のひとつであるさんまの刺身は、脂がのっていて驚くほど美味しかった。女川の新鮮なお魚をあてに、岡さんのお話に耳を傾ける。
岡さんは長年女川に住み、海子さんが設計し、自身が経営する伝説のカフェ「ダイヤモンドヘッド」を津波で失った。そこは町の人々が集い、町の未来について語り合う場だった。そういう岡さんと海子さんだからこそ、住民が気軽に立ち寄り話せる場の必要性を知っていて、それが震災後「屋台」として再現され、そして現在の「おちゃっこクラブ」へと形を変えてきた。
震災直後の時の流れは目まぐるしいほどのスピードでとても辛かったこと、今はましにはなったが未だ速いと感じていることも話してくれた。
都会の時間の流れは慌ただしく、速いと思う。大都市・大阪に住む私でさえも日常となってはいるスピードに疲れを感じることが多々ある。それが、女川では震災という非日常な出来事により、都会とも比べ物にならないほど(あるいは都会とはまったく異なった種類の)恐ろしい速さで時が流れた。穏やかなまちと人々に襲いかかった予測不可能な出来事。体験していない私でも、それはとても悲痛な出来事であり、その瞬間は人格さえも変えるであろうことは想像できた。
...色々な思いはあれど、いつも明るい彼が語る「女川への愛」は、とても眩しく輝いていた。これが彼の原動力なのだろう。

◎交流2日目
岡さんの住む仮設住宅にて、出張「おちゃっこクラブ」開催。
岡さん所有の屋台「キッチンカー」で仮設住宅に出向き、ドリンクを提供することで、人が集い話す場をつくる活動。私もお抹茶のご奉仕で関われることになった。
天気予報は曇りのち晴れといっていたが、残念ながら朝から小雨が降っていたため、開催場所を集会所に変更することになった。

岡さん配布のチラシ効果で住民の女性たちが集まり、一気にテーブルがいっぱいに。
そこで活躍するのは、常時主役の海子お嬢さん。「できるよ、やらせて!」と連呼し、お茶菓子を並べる(時に食べる)、お茶をたてる(私は仕上げ係)、住民さん私物の茶碗を運ぶ(割らないか心底ひやひやの海子さん)...愛らしさに、皆に笑顔が溢れ、笑い声が聞こえる。こどものチカラは最強である。
海子さんが用意したアート茶碗と、飾られた野の草花も、場を明るくし話題にも上る。
お茶の師範の女性も訪れ、薄茶をたてる。一緒に何かをできるのは更にいい。
明るい笑顔を見ているだけでは気づきにくいのだが、会話すると少しずつ、からだに、こころに、被災の跡が見えてくる。1対1になると、より深く。私はひたすら聞く。聞いたあと私が言えたのは「お抹茶は昔、薬とされていたほど体にいいんだよ。今日でまた元気になるよ」くらいだった。

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仮設住宅でのおちゃっこクラブの様子

終了時刻になり、皆笑顔で帰っていく。後片付けをしたあと、港そばの鮮魚店で、魚介たっぷりの女川丼と、海子さんの勧めで初めてホヤを食す。海の味がした。
訪れたどの場所にも、震災前のことも大事に想いながら(苦しい想いもきっと抱きながら)復興に向けて歩んでいる様が見える。女川の人は皆、温かく明るく接してくれる。

そんな女川をあとにする。雨はすっかり上がり、太陽が眩しかった。


...「被災地」という自分の想像が及ばない経験をもつ人々を訪問し、女川の現状や対話工房さんのされていることを知るにつれ、頭も心もいっぱいになり、言語化しにくい事柄や想いも多々ある。それでも、この2日間で対話工房の女川という地域での関わり方、被災地での人との向き合い方を少しは理解できた気がした。
たとえば、対話工房の人々には「強さ」と「優しさ」がある。そしてそれは女川の人々に確実に「響いている」と、彼らと交わった時の人々の様子を見て感じた。

まず「人と向き合い対話する」。被災等で傷ついている相手と対話すれば、正面から受け止めて苦しくなる時もあるだろう。他人を思いやる気持ちがないとできない。強さをもっている。

そして「まちの現状や魅力を(内に・外に)発信する」。「まちの人」に向かって発信するのは、まちの人の「こころの復興」を図っているから。「うみやまさんぽ」で山や島を歩いたり歴史を掘り起こすのは、震災や復興工事で故郷が変化していくなかで、地域の人が大切にしている「女川」というアイデンティティを取り戻したり気づきの機会を得るため。それは、女川の外にいる人がとらえた女川の魅力ある風景写真を大きくのせた「対話新聞」にも通じる思いだ。直接的ではない、優しいアプローチでまちの人々に投げかけている。
また、高齢者の多い地域でもあり、インターネットという電子媒体ではなく、紙媒体という形ある物で手元に届けることの必要性を知っている。紙媒体の優しさや質感、そして屋台の手軽に集まれる感じは、輪音のメンバーの中にもその必要性を感じている者が私を含めいて、本のプロジェクトを進行していたり、屋台のプロジェクトを準備中だ。

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仮設商店街「きぼうのかね商店街」。こどもがはしゃげるやさしい場所

私が今いるここ大阪で。まず、女川に対してできることは、女川に行って感じたことを自分の言葉で構わないので、発信すること。そして大阪という場所に置き換えて思うことは、女川の人たちのように、他人に対する思いやりと強さを身につけること。そうすれば、もし予測不可能な出来事が起こったとしても、皆で乗り越えやすいかもしれない。
そうなるためには、「対話すること」が一手となりえる。大阪には人が集う場が多くあり、人と繋がること自体は容易だと思う。ただ無理なく向き合って「自分の想い」を話しているか、対話できる場があるかというと、多くはないと思われる。自分の事に必死で、身近な人の話さえ聞くことができない、余裕のない人も多かろう。被災地の方々とは比べ物にならないが、抱えている物事もそれぞれあると思うので、何人かとでもじっくり対話できたらいいなと思う。対話工房の「焚き火」のように、気軽に参加でき、深く向き合える「あくまできっかけ」となりえる方法を、ここ大阪でも何かに置き換え少しずつ実践していけたらと思う。

また、仮設住宅での「おちゃっこクラブ」で感じたことは、無理なく創造したり、自身の何かを表現することは、生きる糧や心の拠り所になりえるということ。お抹茶をたてた時の、私と師範の女性は、きっと同じ思いを持っていたはずだ。表現するものを持っているのに自分では気づいていない人や、したいけど躊躇されている人には、時には対話工房さんのように優しいアプローチでひきだしていけたらと思う。

どんな背景を持ったどんな人でも、アプローチする方法は何かしらあるはず。
どの地域にいても、それぞれの地域を愛しよりよくなることを考え、「全国につながる想い」をもって、いずれ大きな輪を奏でたいと思う。

(海子さんをはじめ関わっていただいた対話工房のメンバーの皆様、大変お世話になり感謝しています。また交流の機会をいただいたAAFネットワーク実行委員会と事務局の皆様に心よりお礼申し上げます。)

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<開催概要データ>
[企画名]対話工房の対話ツールで輪を奏でる
[実施日] 2014 年9月6日(土)、7日(日)
[招聘者]海子揮一(一般社団法人 対話工房【宮城県女川町】)
[訪問者]カタヤマアキコ、田中冬一郎(輪音プロジェクト【大阪市】)

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<タイムテーブル>
◎9月6日(土)
 10:00 名取駅集合 海子家のマイカーに乗車
 11:00 仙台市・海子さんのシェアオフィス「SODA」を見学後、女川へ
 14:00 女川町を案内いただく。仮設商店街「きぼうのかね商店街」「女川コンテナ村」、3階建仮設住宅、トレイラーハウス等。
 15:00 仮設店舗「おちゃっこクラブ」にて昼食・ミーティング。
 17:00 ホテル「ステイイン鈴屋」チェックイン
 19:00 そば・和食処「花菖蒲」にてお話を伺いながらの飲み会

◎9月7日(日)
 09:00 おちゃっこクラブ集合、岡さんの住む仮設住宅の集会所へ。おちゃっこクラブの準備
 10:00-12:00 「おちゃっこクラブ」開催
 13:00 寿司・鮮魚「おかせい」にて昼食。店近くを散策
 14:30 仮設商店街「きぼうのかね商店街」にて休憩後、帰路に就く
 16:00 石巻にて解散

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<執筆者プロフィール>
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カタヤマアキコ KATAYAMA Akiko
クリエイティブアウォード関西事務局。
建築系キャリアを活かしながら、表現創造活動は誰でも可能なこと、アートの多様さと地域社会に芸術文化を交える魅力等を発信、支援。自身の表現活動として団地家・屋上流茶会など