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レポート 2014.08.20

2014交流支援プログラムレポート03「レッツ! 匂いを嗅ぐ交流」


AAFネットワーク団体のスタッフが各地で交流する「地域間交流支援プログラム」。活動拠点やその地域の空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行うことができるように、と始まりました。
今年も20のプログラムが実施されます。
今年3番目のレポートは、NPO法人クリエイティブサポートレッツ(静岡県浜松市)を訪ねた、非公式物産展(全国各地で活動)の大村みよ子さんによるレポートです。

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<レポート>

確か今年3月のAAFネットワーク会議でのことだったと思う。クリエイティブサポートレッツのスタッフの方が、私に「同じ匂いがする」と声をかけて下さったことがとても嬉しく、それをきっかけに今回の交流支援プログラムを思い立ち、7月19日から21日までの3日間、クリエイティブサポートレッツが運営する2つの施設〈アルス・ノヴァ〉と〈のヴァ公民館〉を見学させていただいた。
滞在中、非公式物産展のイベント等は実施せず、「アルス・ノヴァの日常を体験し、交流する」ことを目的としていたが、実際は「体験」や「交流」というよりも「ただ見ている人」に近い状態になってしまったように思う。

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アルス・ノヴァ外観。

本当に、アルス・ノヴァの日常をひたすら見続けた3日間だった。

決して気楽な気持ちで今回の交流に臨んだわけではなかったが、障害者福祉の現場は全てが私の想像を超えており、私は対処が出来ず、度々立ちすくんでしまった。ちょっとした手伝いにすら手を出せず、緊張と困惑で、きっと私の顔は強ばっていただろう。いつもの私なら場に溶け込むフリやわかったような顔をしてその場を乗り切るのだろうが、そんな不誠実さなどすぐに暴かれてしまいそうな真剣さに、私は圧倒されてしまったのだと思う。それは決して厳しいものではなく、例えば、何重にも粘着テープが貼られたカラフルなダルマの置物の存在感であったり、思わず笑ってしまうような利用者とスタッフのやりとりであったり、アルス・ノヴァの日常のものごとから醸し出される「空気」のようなものであった。やわらかいけど嘘や不誠実さをはね除ける「空気」。
一方で、私の緊張をほぐすものもまた、ふと目に入る壁や棚に飾られたたくさんの作品やそれを作る彼らの姿だった。粘着テープを貼り重ねて好みの感触を追求する舞ちゃん。制作中、親友に横槍を入れられて激怒するおがちゃん。自分の作品を「すごーい」と自画自賛する剛くん... 彼らの作品やその制作過程を見ていると、そこには驚くほど〈わたし〉がいることに気付くのだ。存分に表現している彼らを見ていると参加したくてウズウズしてしまう。「『自分達は幸せだ!』と声をあげていかなければ伝わらない。」と代表の久保田さんが仰っていたが、アルス・ノヴァの表現者達は声をあげずとも、自身の作品や行動でそれを雄弁に語っている。

彼らの「やりたいことをやりきる熱意」は、クリエイティブサポートレッツ全体を動かす燃料のようなものなのかもしれない。 

アルス・ノヴァやのヴァ公民館において、表現は利用者だけのものではない。スタッフも各々の興味や特技を活かしながら、積極的に表現活動を行っている。むしろ「日々のルーティン」と「個人的な愉しみ」の線引きは、利用者よりも曖昧なのではないかと思うほど、その活動は熱心なものだ。実際、滞在中に業務終了後に行われたスタッフ企画によるふたつのイベント(『モンティ・パイソンの会』『グレー部』)に参加することができたが、どちらも「私はこれが好きなんだ!」という強い想いだけで突っ走ったような素敵なイベントだった。

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のヴァ公民館1階部分。アルス・ノヴァは障害福祉サービス事業所であるが、のヴァ公民館は「様々な人が利用できる私設公民館」をコンセプトとしている。

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『グレー部』の様子。グレーのおやつを食べながら、それぞれの「グレー感」について話し合ったりした。

さて、今回の企画のタイトルは「レッツ!同じ匂いを嗅ぐ交流」だ。いったい私のどこに同じ匂いを感じてくださったのか、結局最後まで恥ずかしくて聞くことが出来なかったのだが、私自身は匂いどころか自分の姿をあらゆる所に見いだすことができた。そして〈わたし〉の姿を見つける度に、少しずつ自分の居場所が拡充していくような嬉しさを感じる反面、果たして彼らと肩を並べられるほどの熱意をもって表現できているのだろうか...と自問を繰り返す3日間にもなった。

非公式物産展も私も、誰かを動かす燃料のような存在を目指していきたいと思う。


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<開催概要データ>
[企画名]レッツ!匂いを嗅ぐ交流
[実施日]2014年7月19日(木)20日(金)21日(土)
[招聘者]NPO法人 クリエイティブサポートレッツ【静岡県浜松市】
[訪問者]大村みよ子(非公式物産展)【福岡県福岡市】

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<タイムテーブル>
◎2014年7月19日(木)
 13:00 アルス・ノヴァ到着
 13:30~13:50 施設案内(1階から3階まで利用者のK君に案内していただく)
 14:00~15:00 「おが台車」(利用者おがちゃんの指示でスタッフ水越さんが台車に電化製品を積み重ねて固定、完成後周辺を散歩する)
 17:00~17:30 剛くんの制作(シールを貼り重ねて立体にする)を見学
 19:00~22:00 「モンティ・パイソンの会」会場:のヴァ公民館(モンティ・パイソンファンのスタッフ水越さん発案の集まり)

◎2014年7月20日(金)
 11:00~12:00  代表久保田さんとスタッフ夏目さんからレッツの活動についてお話を伺う
 13:30~14:30 「ビビビと響け詩の言葉」講師:村木多津男 会場:のヴァ公民館(浜松市在住の詩人、村木多津男さんによる詩と駄洒落の講義)
 14:30~15:00 コーヒー大ちゃん 会場:のヴァ公民館(利用者でバンド「南中野」メンバーでもある大ちゃんが淹れるコーヒーを飲む)
 15:00~16:00 「ムラキングの詩の会~一期一会~」会場:のヴァ公民館(利用者で即興詩を得意とする詩人・ムラキングさんの会)
 19:00~21:00 グレー部~「グレー」に注目してみる1時間~会場:のヴァ公民館(グレー好きのスタッフ加藤さんによるグレーについて語り合う会)

◎2014年7月21日(土)
 10:00~11:00 アート・イン・コミュニティ 会場:のヴァ公民館(アーティスト・ホシノマサハルさんワークショップ/主に利用者りょうたくんの制作を手伝う)
 11:00~12:00 ホシノマサハルさんにお話を伺う
 14:00~16:00 「かたりのヴァ」第3回に参加 会場:のヴァ公民館(テーマ:人との距離 ファシリテーター:西川勝)
 16:10~17:00 代表久保田さんに再度アルス・ノヴァ内を案内していただき本プログラムを終了


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<執筆者プロフィール>
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大村みよ子 OMURA Miyoko
1973年東京都千代田区生まれ。1998年武蔵野美術大学卒業。
2010年に複数名で「路地と人」を立ち上げ、2012年11月まで運営に参加。2013年からは「非公式物産展」として活動。