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レポート 2014.04.03

2013交流支援プログラムレポート06「地域の日常にとけ込むアートフェスティバルの作り方」


AAFネットワーク団体のスタッフが各地で交流する「地域間交流支援プログラム」。活動拠点やその地域の空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行うことができるように、と始まりました。
2013年、6番目のレポートは、NPO法人 淡路島アートセンター(兵庫県洲本市)を訪ねた「アラカワ・アフリカ実行委員会」(東京都荒川区)の西尾咲子さんによるレポートです。

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<レポート>

10月14日〜16日の3日間、わたしたちは瀬戸内海東部に浮かぶ瀬戸内海最大の島である淡路島を訪れ、NPO法人淡路島アートセンターが主催する「淡路島アートフェスティバル2013 -- アートな島あそび」(会期は2013年10月6日〜11月4日)を視察しました。島内に散らばった各会場を淡路島アートセンターの中田アユミさんが運転する自動車でめぐり、本アートセンターのスタッフや理事、アートフェスティバル招聘作家の方々とお話をする機会をいただきました。わたしたち「アラカワ・アフリカ実行委員会」は設立されて1年目。9年目を迎える「淡路島アートセンター」の歩みとプログラム内容を知ることにより、アーティストが境界を超えて地域内部にやってきて、住んできた方々や地域団体・企業とどのように関わり合いながら、どのような場所をプロジェクト地に選んで、フェスティバルをつくりあげていくアプローチがあるのかを具体的に描ければと考えて、交流支援プログラムを利用させていただきました。

1日目は、淡路島の中心市街地にある洲本バスターミナルに到着した後、洲本市民工房内にある淡路島アートセンターの事務所を見学させていただきました。この一帯は、カネボウの工場をリノベーションした赤煉瓦の建物が立ち並び、市立図書館やレストランなどとともにアートセンターが入居しています。それらの建物の周囲を広々とした芝生の公園が取り囲んでおり、とても心地よい文化的なエリアです。本アートセンターは洲本市から洲本市民工房の企画運営を委託されています。わたしたちが訪れたときも、翌日夜に予定されていた野村誠さん+やぶくみこさんによる音楽創作ワークショップ「瓦の音楽」のために、準備が着々となされており、部屋中に並べられた古瓦がワークショップの時間を穏やかに待っていました。淡路島アートセンターのスタッフたちは、淡路島で生まれ育った人が多く、長く生活の場であった空間や近隣関係を内側から見つめて、外から面白い発想とテクニックをもってやってくるアーティストたちと淡路島とのかけ合い・つなぎ合わせを作りだしています。

夕方は、理事長である彫刻家・久保拓也さんが所有・改修をした大きな農業用倉庫「クボ倉庫」に移動し、アーティストユニット「ログズギャラリー」による展示と上映会、アートツアーの様子を見ました。本展示は、ログズギャラリーの「農民車製作プロジェクト」(remo[NPO法人記録と表現とメディアのための組織]が主催、淡路島アートセンターはコーディネートやアドバイザーとして協力)の一環で行なわれています。淡路島の農家が日常の必要さから生みだした農作業のための創作車が、まさにアーティストたちの外からの視点によって、その創意工夫のユニークさを抽出して描いていました。
また、ログズギャラリーが淡路島アートフェスティバルを案内するアートツアーも訪れており、マイクロバスでアートのみどころを食のおすすめを堪能していているようでした。「やっている企画の多さに対して、スタッフの数が不足しすぎている」と頻繁に口にしていた中田さんですが、行政や企業、アーティスト、アートNPO、商店街組合との協力関係がつながりあって1つの時期に総体的なフェスティバルとして立ち上がっているネットワーク力が感じられました。

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夜は、「淡路島アートフェスティバル」の立ち上げ人であるやまぐちくにこさんと、中心スタッフの中田アユミさん、アートフェスティバル招聘作家である林僚児さんとの交流会を設定していただきました。やまぐちさんからは「NPO法人の立ち上げにいたった経緯」や「招聘作家を選定するときの考え方」「地元でアートプロジェクトを行なうにあたって生じる気まずさと面白さ」「意中の面白い地元の人にアプローチしていく方法」「自分たちだけでやりきるのではなく、周囲の人々に頼っていくことの大切さ」など、これまでの深くて広い経験から出てきたたくさんの気づきをお話いただきました。
やまぐちさんが「面白いけれどガードが固い」地域の人に関わってもらうために練っている戦略は、「彼がモーニングを食べる喫茶店の常連になってみる」とか「その人の商店に足しげく通って、徐々に一歩奥に入っていく」など、毎日のさりげない関わり合いの大切さを丁寧に着実にプロジェクトへ活かしていく哲学を感じました。
林僚児さんは「もともともってきたアイデアがまったく変わり、ここでできること、ここで前から踊っていた人たち、ここに存在していた民話、ここを企画運営してきた商店街の組合員たちの推進力によって、今やっているアートプロジェクトができあがってきた」と語っており、アーティストが思っていたことがそのままできるのではなく、もともと潜んでいた諸要素がアーティストをひっぱる淡路島の風土の強さと、それを促すコーディネーターの地域資源の発見眼がうかがえました。

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2日目は、林僚児さんの制作現場を訪れ、野村誠さんとやぶくみこさんによるワークショップに参加、3日目は淡路島アートセンターが企画実施した幼稚園児のためのワークショップを見学しました。淡路島アートセンターは年一回のアートフェスティバルだけではなく、自分たちがアートを用いて課題解決したり潜在力に磨きをかけたりできそうな地域の要素を見つけ出しては、積極的な営業活動を行ない、地域のなかで自分たちの仕事の場を着実に増やし続けていました。立ち上げから9年目、つねに事業とネットワークを広げ、成長と変化を続けているただ中にあるところを見せていただきました。

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わたしたちアラカワ・アフリカ実行委員会が企画運営する年1回の「アラカワ・アフリカ」は、アフリカと意外なつながりのあるアーティストや商店、町工場の方々に、東京都荒川区の下町味あふれる商店街の一角にあるギャラリーで展示を行なってもらうところからスタートしました。展示をとおして荒川とアフリカの意外で魅力的な要素が交じり合い、将来、アフリカとの新しい関係性が荒川から立ち上がることを期待してきました。今回のNPO法人淡路島アートセンターの視察を終えて、いくつもの課題がより見えてきました。「年1回のイベントという制限を取り払っていくべきか」「展示の主会場を一カ所だけに決めてしまっていたメリット・デメリットを再考したい」「荒川区在住のスタッフと、そうではなく別の場所に住まざるをえないスタッフとの役割分担をどのように行なって地域と関わり続けていくか」「わたしたちは次回以降、アフリカからのアーティストを招聘しようと考えているが、地域のなかで協力し合える人や団体、教育機関、商店、どういった方たちと組むと面白いプロジェクトへと発展していくのだろうか」「今回のアラカワ・アフリカ4をとおして荒川の新しい側面を発見・体験することができたが、それらを次回の制作活動にどのように活かせばよいか。」
これらの問いかけを、実行委員会メンバーとの間で共有し、来年の活動の方針を考えるときのスタートラインにしたいと思います。

写真上より
ログズギャラリーの「淡路島農民車」展
林僚児さんの「コモード・アートフェスティバル」
野村誠さんとやぶくみこさんによる「瓦の音楽」ワークショップ

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<開催概要データ>
[企画名]地域の日常にとけ込むアートフェスティバルの作り方
[実施日]2013年10月14日(月)、15日(火)、16日(水)
[招聘者]NPO法人 淡路島アートセンター【兵庫県洲本市】
[訪問者]アラカワ・アフリカ実行委員会(西尾工作所ナイロビ支部〈西尾咲子+西尾美也〉)【東京都荒川区】

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<タイムテーブル>
◎2013年10月14日(月)
14:00-15:00
洲本市民工房内にあるNPO法人淡路島アートセンターの事務所を視察。
  会場:洲本市民工房と淡路島アートセンター事務所
15:30-17:00 
「淡路島アートフェスティバル2013」の展示会場の1つである、クボ倉庫でのアーティスト集団ログズギャラリーによる展示と上映会、アートツアーに合流
  会場:クボ倉庫
17:30-18:00
Time after Timeの屋外ガーデンで展示されているログズギャラリーによる「淡路農民車ミーティング」展を鑑賞する
  会場:Time after Time
18:30-21:00
アルコッコにて淡路島アートセンターのやまぐちくにこさんと中田アユミさん、「淡路島アートフェスティバル2013」招聘アーティストの林僚児さんとの交流会
  会場:アルコッコ
◎2013年10月15日(火)
10:30〜11:30
「淡路島アートフェスティバル2013」のアートプロジェクト「コモード・アートフェスティバル」のたぬき総本山を視察。総合プロデューサーの林僚児さんから説明を聞く
  会場:コモード56商店街
11:30〜12:30
淡路島アートフェスティバル総合インフォメーションを訪れた後、233ギャラリーで開催中の「茂木綾子 NOMADIC LESSON」を鑑賞
  会場:淡路島アートフェスティバル総合インフォメーションと233ギャラリー
15:00〜16:00
NPO法人 淡路島アートセンターの支部「日の出亭」と「無人野菜直売箱アートプロエクト」を見学。
  会場:日の出亭
18:30〜20:00 
「淡路島アートフェスティバル2013」招聘アーティストの野村誠さんとやぶくみこさんによるワークショップ「瓦の音楽」に参加。
  会場:洲本市民工房
◎2013年10月16日(水)
10:00〜11:00
NPO法人淡路島アートセンターが企画した子どもアート教育ワークショップを見学する。講師は京都造形芸術大学こども芸術学科水野哲雄教授。
  会場:健康福祉館

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<執筆者プロフィール>
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西尾咲子 NISIO Sakiko
アラカワ・アフリカ実行委員会事務局長。現代アートでアフリカと日本をつなぐ芸術交流プログラムを企画する西尾工作所ナイロビ支部のアートコーディネーター。京都芸術センター在籍