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コラム 2013.12.20

#30 下之坊修子(映像発信てれれ)


カフェ放送てれれで上映した作品『面喰い』をめぐって、上映会場ではいろいろな意見がでた。「これは女性を蔑視した作品だ」「気持ち悪い」「技術的にはとても良くできているが...」など、上映後の話だけでは終らず、メーリングリストでも意見がとびかった。てれれは一般の人が応募した作品を無審査でカフェなどで定期上映し、上映後は参加者で感想などを話し合っている。

今回は作品の内容についての意見と、てれれがこの作品を上映することに問題がある、という意見があった。メーリングリストでは言い切れないので会って話をしようと、各地の上映終了後、希望者にてれれの事務所に集まってもらい、作者もまじえて話し合いをした。「てれれはどんな作品でも上映するという方針でおこなってきた」「上映後にみんなで話をするので、流しっぱなしではない。だからこそ無審査での上映を続けてこられたのだと思う」などの意見がでた。

選択をしないということは人によってものすごく退屈な映像を見せられてしまうことにもなる。すごく私的な作品もあるが、それらの映像から多様な価値観を発見することもある。
苦い体験をした人が、ある映像から苦痛を感じることがあるかもしれない。そういうことも感じながら、開かれた場で話し合うということが、なんだかとてもたいせつなことのような気がする。

上映を見にきた人が作る人に変わったり、上映を始めたり。またてれれが自分にとってはだいじな居場所だという人もいる。高齢者の作品、車椅子の人の作品、セクシュアルマイノリティの人の作品、海外からの作品や脱原発の作品など、作り手もテーマも様々な作品の上映会を10年続けて来た。

しかし、この年末で定期上映はお休みすることにした。スタッフがいなくなったのと、維持費が難しいのと、人が集まらなくなったから、マンネリしてきたから、など考えていたが、冷静に振り返ってみると、そこのところは最初からあまり変わっていない。常に資金不足、人不足に悩みながらやってきた。「もっと良い作品を選んだら人が集まるのに」と言われ続けながらがんこに無審査でやってきた。誰でもが表現し発信できる場を作りたかったからだ。
けれども続けていくうちに、このままでいいのか、新しいやり方を考えなければいけない、あれやこれやと焦ってみるが、準備に振り回されちゃんと向き合いきれなかった。何かがちがう、何だろう。初期のころのワクワクした、また戸惑わされるような作品が少なくなってきたからだろうか。主催する側が楽しめないと、よけいなことが気になり出す。たとえ小さな上映会になってもいいのだ、それより集った人でおもいきり楽しめたらいいのだ、という価値観を自分の中に落とすためにはかなりの覚悟がいる。これでいいのだと思える覚悟が。

AAFに初めて参加したとき、いつも何やっているのかわかりにくいと言われ続けていた「てれれ」が面白いと言ってもらえた。ああ、これで良かったのだと思えた。てれれが自費出版した『人と場をひらく映像表現』の中に「てれれにはアホな映像から勉強になる映像までいろいろな映像が集まる。そんなたのしそうな条件がそろっているのに上映会はまだまだフツーなんだよなあ」と書いてくれた人がいた。来年は定期上映を休憩して、AAFのネットワークの人たちがどんなことをしているのか、その地を訪ねながらヒントを得たいと思っている。てれれの楽しい上映会に向けて。ただし、これまでに約600作品も集っているので、テーマ別などの希望作品の上映依頼には応じていきたいと思っている。



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下之坊修子 Syuko Shimonobo
1991年ウーマンズスクールで映像制作を学ぶ。2003年カフェ放送てれれ開始。 2006年 「映像発信てれれ」設立。AAFには2011年から参加。『離婚を選んだ女た ちPart1.2』全州国際映画祭、『忘れてほしゅうない』ソウル女性映画祭/台湾 女性映画祭、『ここにおるんじゃけぇ』山形国際ドキュメンタリー映画祭/あいち国際女性映画祭/ソウル・インディペンデント・ビデオ&フィルム映画祭正式出品。
映像発信てれれ http://www.terere.jp/