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コラム 2013.07.20

#25 宮城 潤(compass)


一人娘が小学校に入学してからPTAというものにかかわるようになった。
PTAとは、保護者と教職員による社会教育関係団体のこと。いわゆるあのPTA(Parent-Teacher Association)である。

2001年に前島アートセンターというNPOを立ち上げ、那覇市前島3丁目地域を拠点に、沖縄県内各地で様々なプロジェクトを行った。子どもワークショップを企画、実施するなかで、地域にある若狭小学校と協力関係を築いていたことに加え、娘が小学校に入学した当時は、すぐ近くにある公立公民館(那覇市若狭公民館)の非常勤館長を務めていたこともあって、校長先生をはじめ、先生方やPTA役員とも知り合いになっていた。
どこの学校でもPTA役員を引き受ける人がいなくて苦労していると聞くが、若狭小学校も同じだったようで、娘が入学すると同時に、校長、教頭、PTA会長、副会長が代わる代わる公民館に足を運び、PTA役員になってくれ、と頼まれた。

PTA一年生の私には、PTAがどんな組織体制で、どのような活動をしているのか、全くわからない。それなのに、いきなり副会長という役職を与えられた。
会議に参加しても、そこで話されている言葉の意味がよく分からない。行事について話しているのだが、その行事を知らないし、時折出てくる省略した単語も意味不明。PTAベテランのお母さん方に囲まれ居心地の悪さを感じながらも、そこにいる場違いな自分の存在がなんだか新鮮でおもしろく感じていた。
PTAというと、いわゆる"教育ママ"のイメージがつきまとう。実際、役員で活動している方々は生真面目で優等生タイプが多い印象がある。そもそも学校教育は、ある規範に基づいて体系的に学んでいく場。既存の枠組みを疑い、新しいビジョンを提案し、そのイメージを実現させるために全力を尽くすアーティストとは別の価値観がそこにはある。
子どもたちを取り巻く環境には、学校教育やそこに関わる大人たちによる影響が大きいことは言うまでもないが、その価値観になじめない子どもたちがいるのも現実だ。子どもたちの教育の現場で、多様な価値観を認め、そのなかで新しいものを生み出していくことができるようにするためには、アーティストやアートの魅力を知っているものの存在が重要な役割を果たすと思う。

AAF2006で、前島アートセンターは「祝・前島3丁目祭り」というプロジェクトを行った。自治会主催のお祭りを支援するという企画で、アートプロジェクトといってもアート作品はどこにも存在しないし、アーティスト主導のプログラムもひとつもなかった。アーティスト達はそれぞれ、お祭りを運営する実行委員会の一人として関わり、地域住民が提案するアイディアを膨らませ実現するお手伝いをしただけだった。アートプロジェクトとしてお祭りを観に来た人にとっては、肩透かしを食う格好になったかもしれないが、地域の方々にとっては、どんなアートプロジェクトよりも「アーティストすごい!」と感じることができたようだ。日頃から人々の想像を超える発想とそのイメージを実現させるためのスキルを鍛えているアーティストが地域のなかに普通に存在できることが豊かな社会をつくる上で必要なんじゃないか、その頃からそう考えるようになっていった。

「祝・前島3丁目祭り」の2年後、PTA副会長になり、3年務めたあと会長に。今年で会長も3年目になる。アーティストのようにおもしろいイメージやそのイメージを形にする力も持っていないが、アートプロジェクトに関わった経験が少しでもPTA活動に反映されているかもしれない、そう感じる瞬間がある。
PTA活動を行う際、「アート」は意識していないが、無意識的に、経験して蓄積されたものが出ているんだろうな、とは思う。
異なる文化を持つコミュニティのなかに入り込むのはストレスもあるが発見も多い。アーティストやアートプロジェクトに関わっている人たちには、ぜひとも未来を担う子どもたちへの教育の場に主体的に関わっていってほしい。できれば「アート」という言葉を抜きに、自然に。そうすることで、子どもたちはもちろん、子どもたちの環境を作っている大人達もきっと少しずつ変わっていくはずだ。

というわけで、最近私のなかでは、アーティストに対して「PTAのススメ」をするのが流行っている。

子どもたちを取り巻く環境をより創造的にするために、PTA活動やってみてはいかがでしょうか?

1972年、沖縄県那覇市生まれ。沖縄県立芸術大学大学院(彫刻専攻)修了後、2001年前島アートセンター設立、初代理事長を務める。まちなかを舞台にした現代アートプロジェクト「wanakio(ワナキオ)」を企画(2002,03,05,08年開催)。
沖縄県立博物館・美術館にも関わり、2007〜2010年は指定管理者「文化の杜共同企業体」アドバイザー、2012年〜沖縄県立博物館・美術館協議会 ワーキング会議メンバーを務めている。現在は、NPO法人アートNPOリンクの理事。沖縄アートサイト「compass」メンバー。
また、2007〜2009年、公募による非常勤館長として那覇市若狭公民館に勤務。その後、2010年より若狭公民館が一部業務委託という運営体制に移行すると同時に、業務受託団体「NPO法人地域サポートわかさ」の事務局長兼公民館事業部長として、引き続き若狭公民館の運営に携わっている。2010〜2012年、文部科学省より社会教育アドバイザーを委嘱される。
PTA活動としては、2008〜2010年、若狭小学校PTA副会長、2011年〜PTA会長。また、那覇市PTA連合会において、2011年家庭教育副委員長、2012年家庭教育委員長、2013年本庁ブロック長を務めている。

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