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レポート 2013.06.26

2012交流支援プログラムレポート05 藤浩志関連プロジェクト探索ツアー


その年のAAFに参加する団体、これまでににAAFに参加してきたネットワーク団体のスタッフが、それぞれの地で交流する「地域間交流支援プログラム」。活動拠点やその地域の空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行うことができるように、と始まりました。
2012年は20のプログラムを実施しました。今回ご紹介するのは、福岡県糸島市の糸島アーツファームを訪ねたMiracle Water(東京都豊島区)、阿部和璧さんによるレポートです。(2012年10月当時)

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<レポート>

九州一の繁華街、福岡市天神から電車で約40分、玄界灘を見渡せる静かな海岸と、のどかな田園風景の先に辿り着いた筑前深江の駅から、今回の交流プログラムは始まった。当初目的としていた藤浩志さん関連プロジェクトとして、「糸島芸農」を見ていくという方向性は、藤さんがこの春から十和田市現代美術館・副館長に就任され、期間中にはそれほど関われなかったということもあり、まずは実際のプロジェクトを見て、同じ藤さんが関わった自分達の活動との共通点や相違点を見てみようと、展示会場を巡ってみることにした。
 
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どこか南国を思わせる町並みや、人々ののんびりとした心持ちを感じながら、ゆったりとした足取りで巡る「糸島芸農」。神社や醤油醸造元、堆肥倉庫や稲穂の実った田んぼの脇で見るアート作品は、その日の夕方、意見交換会でプロジェクトの立ち上げから、運営の多くを担ってきた松崎宏史さんの話にもあったように、「農とのコラボ作品としては、まだよく分からないですけど、場所を貸してくれたり、作品設置とかで手伝ってくれた人とつながることができたし、その経緯を次回に生かせると思う」という地元の人々との新たな関係を生み出すツールとして機能しているように思えた。

近年、海と山とに囲まれた恵まれた環境や、福岡市内へのアクセスの良さから、多くのアーティストや工芸家が糸島へ移住し、生活をしながら制作活動を行っているという。そんな人々と地元の人とを橋渡しする存在としてStudio Kuraを運営してきた松崎さん。美術教室やレジデンスといった活動を積み重ね、その経験を活かし、「もっと生活に密着した生活の中での芸術との接点」を提示する試みとして、春の「アートの種まき展」から秋の「アートの収穫祭」まで、稲の成長にたとえて糸島芸農を開催。
 
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期間中は、作品展示だけでなく、様々なイベントやワークショップも開催。展示を巡ったその日に行われていた「糸島ビアファーム」では、一面に広がる田園風景の中にある枝豆畑を会場として、ビールを飲みながら、採れたての枝豆を湯がいて食べるというイベントが行われており、多くの家族連れで賑わっていた。そのスタッフの方に話を聞いてみると、「去年は1000人以上が参加した大型イベントとなり、スタッフが疲れてしまった。今年はそうならないように50組限定にして、みんなで楽しめるものにしました」という説明があり、一概に参加者数だけで、イベントの価値が決るものではないということをあらためて教えられた。

8つの会場を巡り、最後にたどり着いたStudio Kuraで松崎さんに再会。会場を移して、関係者の方々と意見交換会を行った。話は主に、このような広いエリアで、5ヶ月もの長期間のプロジェクトを開催することができた理由や、そこで得たものについてだった。規模や活動形態は違えど、共に共通する悩みや問題点について、実際に現場で動いてきた人々の意見や考えをまとめて聞く機会など、そうあるものではなかっただけに、今後の自分たちの活動に活かせるものになったと思う。
 
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交流2日目は、当初の予定とは異なり、5ヶ月間続いた糸島芸農の最終日に行われるディスカッションに参加することになった。「これからの糸島、これからの芸農」というテーマで話し合われた座談会では、出展作家さんやスタッフの方々、糸島芸農に興味を持った人々が、自分の視点から見た糸島芸農についてや、それをいかに持続可能にしていくかを話し合った。その話し合いの中で聞いた、「自分のできることを見つけてやっていく点と、その姿勢が周囲の人々に、自分もここで何ができるかもと思わせる点が、このプロジェクトの特徴」という意見には、同じ藤浩志さんが関連したプロジェクトとしての共通点を感じた。

ディスカッション後には、糸島芸農の関係者の方々が集った打ち上げ的な飲み会にも参加。地元で取れた食材を使った料理とお酒を交えながらの歓談は、イギリスとシンガポールからのレジデンスアーティスト2名も加わり、地域性だけでなく、国際性も兼ね備えたものとなった。たまたま席が隣となり、今後の社会やアートのあり方について話してくれたイギリス人・アーティストのナイジェル・ベネット(Nigel Bennet)さんは、「既存の資本主義や社会主義といったシステムが立ち行かなくなっている今、普通の人々の小さな行動の積み重ねが社会を変えていく要素になっていく。だからこそ言いたこと、伝えたいことをそれぞれが持つ技術で表現し、伝えていくことがこれからの時代には大切になっていく」とお酒を酌み交わしながら話す夜は更けていった。

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<開催概要データ>
[企画名]藤浩志関連プロジェクト探索ツアー
[実施日]2012年9月22日(土)、30日(日)
[訪問者]阿部和璧(Miracle Water )【東京都豊島区】
[招聘者]松崎宏史(糸島アーツファーム)【福岡県糸島市】

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<タイムテーブル>
◎2012年9月22日(土)
11:00 糸島に到着
11:00〜17:00 二丈地区各所に展示された作品や藤浩志さんのスタジオを見学
17:30〜19:00 松崎さんをはじめとした出展参加さん、スタッフの方々との意見交換会
◎2012年9月30日(日)
16:30~18:00 糸島芸農最終日のディスカッション「これからの糸島、これからの芸農」に参加
18:30~21:30 交流会に参加

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<執筆者プロフィール>
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阿部和璧
Miracle Water Documenter、居場所部書記、ライター