コラム RSS

コラム 2013.03.20

#21 国松希根太(飛生アートコミュニティー)

飛生(とびう)地区に引っ越してきてから10年の月日が流れた。かつて、小学生の頃に2年間過ごした場所であり、現在はそこで妻と娘2人との生活を送っている。2002年の秋に住みはじめた当時は、大学卒業1年後で先が全くみえないなかで、とにかく作品を作れる場所を探していた。だから田舎であろうがどんな環境であろうが、作る場所があり住む環境さえあればどこでも良かった。自分自身、大学では彫刻科で金属を専攻していたのだが、気がつくとそれまで苦手意識のあった木を素材に作品を作っていた。素材が変わったというよりも考え方が大きく変わった。歴史が浅いと言われる北海道にも土に眠る歴史は必ずあり、土着的なものやアイヌの人々の暮らし、それ以前の歴史があることに興味が湧いていた。都会から田舎へ移ることで、"人が作り出したものに囲まれる世界"から、"人が作り出せないものに囲まれる世界"へと変化したのも大きな理由だろう。土地の地名の語源や歴史などを探していくことが大切な時間になっていた。作品の為かそうでないのかは今もわからないのだが、とにかく身体が自然に動いていた。名前も知らない近くの山を登ったり、アイヌのお爺さんに言い伝えを聞きにいって遺跡を案内してもらったこともある。ただ、もっと身近なところで飛生地区の歴史を知る人達がいた。飛生町内会のご高齢の人達である。

飛生に住みはじめた頃は、町内会との関わりも稀薄で、自分は疎外されているんじゃないかと思って行事に参加せず、参加しないことで罪悪感を感じていたり良い関係とはいえなかった。ただ、なかには気さくに声をかけてくれる人もいたし、個人的に話せる人もいた。まずは話しやすい人から少しずつ接近していくようになり、開拓当時の話を聞いた。そのなかで、自分がアトリエとして使用している小学校を立てる際、地域の人たちも手伝っていたこと、グランドは馬を使って根を引き抜いて出来たことなどの話が聞けた。毎年、馬頭観世音という馬の供養を目的としたお祭りを大切にしている意味がやっと理解出来た。今では自分もそのお祭りを手伝う一員であるし、町内会の人との距離も縮まってきている。

数年前から飛生という場所が好きで集まる仲間たちが増えてきて、その環境に癒されて帰ってゆく。そんな仲間達と一緒にお祭りや森づくりを運営できているのは奇跡的なことだし幸せなことだ。でも、最近感じたのは、単に環境によるものだけでなく、人が人を呼んで集まっているということに気がついた。森づくりの仲間に「重労働にも関わらずどうして関わるのか?」と問うと、それは「単純に楽しいから」、人と会えることが大きな理由だという。人が集うことで生まれる輪がそこにはある。「飛生芸術祭」では、運営する人とお客さんの垣根を壊して一緒にその輪を作り広げたいと考えている。そして、自分たちが喜びを味わえることを土地に感謝出来るお祭りでありたいと思っている。昔から地域にあるお祭りに比べると薄っぺらいかも知れないが、新しく歴史を作る為にも楽しみも大きい。

AAFに参加して2年目、全国には深い歴史があるところや、今、まさにはじまりつつある取り組みなどがあり、それぞれに人との関わりや時間の流れを持って輪を形成していることを知ることができた。それだけでも貴重な体験なのだが、その輪同士が連携を取り合い大きな集合体となって新しい輪を作り出そうとしている。この輪の一員として学べる機会を存分に活かしたいと考えている。


飛生アートコミュニティーとは
旧飛生小学校(白老町)を活用して1986年に設立された共同アトリエ。主に作品の制作や展覧会、イベント、プロジェクトなどを開催し、世代を継いで現在まで様々なアーティストが活動を続けてきた。近年は、若い世代のアーティストに加え、多方面で活躍する人々が集結し、校舎を一般開放して大々的に開催する「飛生芸術祭」、森づくりを通じて森と人との共存を考える「飛生の森づくりプロジェクト」、白老町に滞在し地域の人達と交流しながら作品制作をする「白老滞在型ワークショップ」、アーティストが講師となって指導する「美術教室 いろどり」を実施するなどアートを通じた交流の場としても機能している。http://www.tobiu.com/



kunimatsu.jpeg国松希根太(くにまつ・きねた)

1977年、札幌市生まれ。多摩美術大学美術学部彫刻科を卒業後、2002年より白老町にある飛生アートコミュニティーを拠点に制作活動を行なう。近年は、木を素材とした彫刻作品の他、平面作品やインスタレーション作品など、活動の幅を広げている。香港での個展"RAINY DAYS"、上海でのグループ展"雪国の華 -N40°以北の日本の作家達-"、中国吉林省図們江彫刻公園(図們市)に作品設置など、国内外で発表活動を続けている。飛生アートコミュニティーの活動として、アート関連のイベントや展覧会の企画にも多数関わる。

http://www.kinetakunimatsu.com/
Photo: Yuko Takeyama