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メッセージ 2013.02.20

#20 松崎宏史(糸島芸農)


広島の大学を卒業した後、ドイツで約5年間作家活動をしてきた。ヨーロッパ各地のアーティスト・イン・レジデンスにも、機会があれば積極的に参加した。
アートが身近に溶け込んでいるヨーロッパの環境に羨ましさを感じつつも、地元糸島に帰ろうと決心した時、環境、文化が違う中でアートをやっていくため、作品作りの前に、まずは環境作りから始めよう、そのための拠点を作ろう、と思った。今まで参加してきたレジデンスを思い浮かべ、作家が集い、地域と関わりながらアートを発信していける場があればと思った。

2007年に海外の作家を招くアーティスト・イン・レジデンスStudio Kuraを立ち上げた。最初は、こんな田舎の小さなレジデンスに来る作家がいるかな? と思っていたが、webサイトを公開して以来、次第にメールがくるようになった。Studio Kura Awardなるものを作って、優秀な成績で卒業した生徒を毎年派遣してくるシンガポールの学校もある。

いろんな作家の多様な表現、考え方を紹介すると同時に、作家と共に糸島の人、モノ、歴史の素晴らしさを再発見できるのが、レジデンス運営の醍醐味だ。これまで、15カ国から24名のアーティストを受け入れてきた。田舎で、十分な設備もないが、それでも作家たちは世界中からやって来てくれる。その期待に応えるべく、公立の機関ではできないような大胆な企画や、より地域に密着したレジデンス・プログラムを目指している。

最初は外国人を見るのが珍しく、「なんばしようとかいな?」と怪しんでいたご近所さんたちも、だんだん外国人作家が田んぼ道をうろうろ歩いているのにも慣れてきて、「松崎さんとこおるっちゃろ? あんたどこの国から来たと? なんば作りようと」と、気さくに作家に話しかけてくれるようになった。異国の来訪者と話したい一心で、英語を習い始めたご老人もいる。

作家は、凄い距離を移動してここに来る。そして出会う。この地に、人に。アイデアとインスピレーションが沸き起こり、新しい人・モノとの出会いが、アートの化学反応を起こし作品が生まれでる。その瞬間はとてもワクワクするものだ。目撃する度に虜になる。この出会いの空間が、漠然と浮かんでいたアートの拠点の形なのかなと思っている。

Studio Kuraには、農家や漁師、プログラマー、デザイナー、建築家など、様々な職種の人々がレジデンスアーティストに会いに、ふらっと来てくれる。昨年春には、そうした人たちとアーティストが一緒になって試みる[糸島芸農]が始まった。AAFに参加したことで、日本各地のアートプロジェクト関係者にも出会えた。また色々なものが繋がりだした。これからどんなアートの化学反応が起き、広がっていくのか、とても楽しみにしている。


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松崎宏史(糸島芸農)
1979年福岡県糸島市生まれ。広島市立大学芸術学部油絵科卒業後、ドイツハノーバー専科大学で学ぶ。美術家、Studio Kura代表、糸島芸農プロジェクト実行委員長。2009年アートカンパニー株式会社Studio Kuraを設立。糸島から世界へ文化発信をモットーにアーティスト・イン・レジデンス、美術教育、美術作品制作事業を手がける。