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メッセージ 2012.12.20

#18 森真理子(一般社団法人torindo/まいづるRB)


私的なことですが、現在、妊娠生活を送っています。

お腹の中に子どもがいるというのは初めてのことで、そのせいなのか、ふと何年も前に亡くなった祖母のことを考えました。私には明治生まれと大正生まれの祖母がいました。大正生まれの祖母とは小さい頃は一緒に住んでもいたし、もう一人の祖母との思い出もたくさんあります。ある日、これまで「おばあちゃん」として存在していた祖母たちの、さらに祖母にあたる存在に思いをめぐらせました。私の祖母たちが孫であったことに、です。当時は今より寿命も短かっただろうから、祖母たちが自分のおばあちゃんのことを覚えていたかどうかは分かりません。祖母たちが孫だった時代の話を聞いたこともありません。でも、私の祖母にも母がいて祖母がいて、その時代はきっと、1800年代の半ばから後半だっただろうと思います。祖母の記憶とその人生の痕跡が何かの形で私に染付いているように、私の祖母にも祖母の記憶の断片や生活の名残があったに違いありません。そう思うと、いまから150年ぐらい前のことが、自分の身体に何かの形で残っているような気がしました。

そして、自分の子の時代、そのさらに次の子の時代のことを考えます。私の子孫がうまく残っていくかどうかは分かりませんが、残るとすれば、私を「おばあちゃん」と呼ぶ孫は、きっと2000年代の後半を生きることになるでしょう。その孫のさらに孫は2100年代の半ばを生きるのかもしれません。

こうして記憶の連鎖を思うと、1800年代から2100年代の300年ぐらいというのは、私という生を間に挟んで、そんなに遠くない過去であり未来である気がしてくるから不思議です。戦前/戦中/戦後と一括りにしてしまう学校の「歴史」で学ぶ時代のことも、ドラえもんがやってきた22世紀という時代も、個人の記憶や生に立ち返ってみると、知っている誰かが生きている、当たり前のようにつながっている身近な存在です。こうした時代感覚が私たちの身体には本来備わっているはずです。過去と未来の間でしか生きられない私たちが、どのように過去と未来を捉えて生きていくかということは、とても大切なことに思えます。

そのような時間軸の持ち方や時代感覚を大事にしながら、現在関わっている、そしてこれから関わっていく仕事やプロジェクトを行っていきたいと思うこの頃です。


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森 真理子
1977年愛知県生まれ。南山大学文学部人類学科卒業後、古川美術館学芸員、愛知県文化情報センター、京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター等での仕事を経て、2007年よりフリーランスで美術・演劇・ダンス・音楽など幅広いジャンルで企画制作・プロデュースを行う。
2009年より京都府舞鶴市でのアートプロジェクト「まいづるRB」ディレクターを務める。2012年より非営利芸術活動団体「一般社団法人torindo」を立ち上げ、代表理事を務める。