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レポート 2012.09.14

2012交流支援プログラムレポート04「利賀・手業でつながる山と人のアート展、視察・体験主催者との交流」


AAF2012参加団体、ネットワーク団体の担当者が交流する「地域間交流支援プログラム」。それぞれの現場やまちの空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行うことができるように、と始まりました。現在では、新しい視点を獲得することで、これまでにないプロジェクトが立ち現れようとしています。
今回は、「利賀・手業アートプロジェクト実行委員会」(富山県南砺市)を訪ねた「ことほぎ和歌の浦アートプロジェクト」(和歌山県和歌山市)、池田亜由美さんと中里佳世さんによるレポートです。

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<レポート>

関西でも辺ぴと思われているわが和歌山にとって、ほぼ接点がないと思われる富山県。
まずは旅程を考えることから始まった。大阪発の深夜バスで早朝、富山駅着。距離感もつかめないまま、実行委員会の森山紗也子さんおススメの良心的なレンタカーで向かった。
「利賀」は「南砺(なんと)市」にある。世界演劇祭「利賀フェスティバル」で知られる '山奥'と思われるこの地で、この夏6年目のアートイベントが開催されていた。地元の方だけではなく、東京や近県など他の地域の方々も一緒にプロジェクトを運営している「上畠アート」。地元以外の方が、なぜ利賀村に魅力を感じ、どのようにして地域とつながり、人々を巻きこみ、このようなプロジェクトをたち上げおこなうのか。お昼前、メイン会場「瞑想の郷」にたどり着くと、思ったより暑い(!)炎天下の中、笑顔で車を誘導している若いボランティアの姿があった。地元一番の絶景・パワースポットともいわれる会場。その独特の空間を生かした形で、作家それぞれの作品が周囲の山も含めた野外にいわゆる「アート」作品が展示され、金沢・大阪などからも来ていた「クラフト」作品等の展示販売のブースやワークショップなど、幅広いジャンルながらも選りぬきのものが集まっていた。

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今回お話を伺った代表の森山紗也子さん、「利賀ゼミ」伊藤悠さん。「利賀ゼミ」とは、主に東京中心の都市を拠点とする参加者が利賀村に通い、それぞれのテーマに基づいてプロジェクトを実行するという、利賀村における一連の活動の総称だそうだ。大学のゼミのように全員が持ち回りでリーダーとなり、自発性と平等性を重視している。
そして地元の方でご紹介いただいたのが、いわゆる村のキーパーソンといえる利賀村の役場の元職員の中谷信一さん。中谷さんは「利賀フェスティバル」や、北陸を代表するイベント「南砺利賀そば祭り」のたち上げに尽力された中心人物。他にもそばの原産国の一つであるネパールとの友好関係を築き、体験&滞在できる「そばの郷」観光エリアを開発したり、曼荼羅に魅了され「瞑想の郷」を作ったり、個人コレクションを展示する「郷土玩具美術館」も運営し、現在の利賀村の礎を築いた人物だ。交流場と思しき自宅のコテージで、コシがしっかりして美味しい(!)利賀産素麺を学生と一緒にふるまっていただいた。 

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そして「上畠アート」主催のカフェで隣席したことで出会った、地元で建設業を営む野原一司さん。「そば祭り」の雪の彫刻、利賀芸術公園の劇場などの制作にも関わってきたそうだ。幸運な偶然で「富山県利賀芸術公園」をご案内いただいた。野原さんの言葉の端々には自分たちの村への誇りと愛が溢れている。
「ここに移住してもらうのは厳しいかもしれないが、このようなイベントに来てもらい交流し、感動を持って帰ってもらうことで、ここはなくしちゃいけないと思ってくれる人がいれば、この村はなくならないのではないか」
「交流」により魅力を知ってもらい、外部から町を守るという考えは、目からうろこだった。わたしたちへの温かいおもてなしぶりからも、中谷さんや野原さんたちの、森山さんたち「利賀ゼミ」メンバーへの絶大なる信頼の気持ちが自然と伝わってくる。

「利賀ゼミ」は年に数回、「民泊」(=民家での宿泊。主に高齢者)して交流を図っている。そもそもメンバーの伊藤さんが「そば祭り」に参加した後、幾度か村を訪れ、中谷さんたちと交流を深めてきた。中谷さんが「上畠アート」を3度開催し、4度目から伊藤さんがひき継いで現在に至っているという。学生を中心にした若いボランティアの数が多いのは、伊藤さんが人とのご縁を確実につなげた結果だった。インターネットでの大学の先生との出会い、滞在型ボランティアが、大学のゼミの活動のひとつとして魅力的であったということ。
「利賀ゼミ」が、「上畠アート」に携わるようになったきっかけは、自然な流れだった。わたしたちはいったいどれだけ「和歌の浦」の人々と「交流」をしてきただろうか。地元民としての意識を高くもつこと、日ごろから「交流」を心がけること、もともとある地域資源を活用すること。あるべき姿を目の当たりにした機会だった。

翌日、地元のおばあさんたちの「てご」というかご編みのワークショップに、わたしたちも参加した。「地元に残る手わざを、せっかくの伝統的な技術を絶やしてしまうのはもったいない。もう使わない技術であっても、こうやってワークショップをすることでみなさん思い出されるんですよ。そして人に伝わっていきます。」と森山さん。そこには、本当におだやかな空気が流れていた。

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 ※利賀ゼミについて http://togazemi.jimdo.com/利賀ゼミ-とは

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<開催概要データ>
[企画名]利賀・手業でつながる山と人のアート展、視察・体験主催者との交流
[実施日]2012 年8月25日(土)~26日(日)
[招聘者]森山紗也子(利賀・手業アートプロジェクト実行委員会【富山県南砺市利賀】)
[訪問者]池田亜由美・中里佳世(ことほぎ和歌の浦アートプロジェクト【和歌山県和歌山市】)

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<タイムテーブル>
◎2012年8月25日(土)
11:30-13:00
 「瞑想の郷」会場にて代表・森山さんとランチ&ディスカッション。
 利賀ゼミの成り立ち、森山さんご自身の森との関わりについて
13:00-15:30
 地元・野原さんとの交流・「富山県利賀芸術公園」を見学
 世界・全国各地から集まる(村人口以上)空気感に圧倒される
15:30-17:00
 「上畠アート」見学
19:00~21:00
 中谷さんのご自宅と「郷土玩具美術館」見学
 近くの広場のバーベキュー・パーティに参加、伊藤さん他と交流会
◎2012年8月26日(日)
10:00-12:00
 「上畠アート」見学・地元の高齢者の方から教わる「てご」編みワークショップ体験

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<執筆者プロフィール>
ことほぎ和歌の浦アートプロジェクト 採録:池田亜由美 構成:中里佳世

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池田亜由美
和歌山市在住。主に広報におけるデザイン業務を担当。個人では絵画やインスタレーション作品の制作を行い、展示活動などを行っている。
 



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中里佳世
和歌山市在住。主に広報を担当。他にも海南市でまちなか映像祭、映画を奏でる音楽会(2013年2月予定)、和歌浦ショートプロモーションフィルムプロジェクト、各上映会等、映像を中心に音楽その他文化振興に関わる。