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レポート 2012.02.16

2011交流支援プログラムレポート07「隠岐『美田小学校』× 松山『中島東小学校』」


AAF参加団体、ネットワーク団体の担当者が交流する「地域間交流支援プログラム」。それぞれの現場やまちの空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行うことができるように、と始まりました。現在では、新しい視点を獲得することで、あるいは別の視点が持ち込まれるによって、これまでにないプロジェクトが立ち現れようとしています。
今回のレポートは「アートプラットフォームえひめ」の徳永高志さんです。

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<レポート>
瀬戸内の島々は急速な人口減少でつぎつぎと小中学校の休校がすすんでいます。それぞれの学校は、多くは開校100年を超え、名実ともに地域の拠りどころになってきました。私たちは、松山市中島の旧中島東小学校を一日だけ開きアートプロジェクトをおこなう「島の学校」を構想したのですが、休校が決まると同時に休校後の活用策を探り、事業を開始している西ノ島町の美田小学校は、よいお手本でした。2011年、アサヒアートフェスティバルの交流プログラムに採択され、念願の美田小学校訪問を果たしました。
いわゆる「中四国」として、道州制構想においてもまとめられてしまう隠岐と松山ですが、車と船で移動時間は9時間。公共交通機関を使えば、11時間かかります。瀬戸内海を行き来するフェリーよりも一回り大きな船に境港から乗りこむと、低気圧が接近していたにもかかわらず快適な船旅で別府港に。外浜まつり実行委員会代表の松浦道仁さんに出迎えてもらいました。御紹介いただいた宿はホテル鶴丸。新鮮な海鮮の夕食で満腹になると、美田小学校に向かいました。

隠岐2011‐1.JPG
美田小学校は開校137年、現校舎は築86年の伝統を持ち、2011年3月に休校となりました。風格ある校舎には、地域の記憶が積み重なっています。今年のプロジェクトは「隠岐アートトライアル2011「美田小学校の実験」」と題して、夜の小学校を舞台に、AAFでもおなじみの岡田毅志さんと田島史朗さんがアートディレクションをおこないました。彼らは、この島でかつておこなわれていた「たたら」による鉄づくりに触発されて、「砂鉄の物語」というプロジェクトを開始し、今年は「砂鉄の物語・最終章」という大きな作品を教室に展示し、素材そのもののもつ圧倒的な量感を提示しました。

隠岐2011‐2.JPG
白眉は「つみもの」。体育館にずらりと設えられた椅子と机に置かれた代々の卒業写真が、白熱球の照明に浮かび上がりました。自分にゆかりの写真を探しに来る人が絶えることはなく、その様も作品の一部に溶け込んでいました。18日の影絵発表会「イカ寄せ浜の伝説」のためにワークショップ(9月4日)で作成された魚やイカの群れも美しいシルエットとして学校を飾りました。

隠岐2011‐3.JPG
翌17日は、午後から、美田小学校校長室でおこなわれたシンポジウム「美田小学校の可能性」に参加しました。隣の海士町や私たちの住んでいる松山市などの事例も交えて、休校になった小学校活用の可能性を考えました。とくに興味深かったのは、休校小学校活用の手法は地域の切実なニーズに沿わなくてはならないけれど、そこにアートが介在する意味は何か、という点でした。アートは、地域づくりに対して必ずしも即効性はないが、美田小学校の歴史=100年くらいは見渡せるし、場合によっては日常生活からは想像できない化学反応をおこす触媒になるという共通認識を得られたのではないかと思います。また、地域の女性たちが中心になって開かれたカフェで手作りのお餅や珈琲をいただきました。
夕刻、松浦さんが宮司をつとめる焼火神社にうかがいました。隠岐の歴史と信仰そのものを体現している焼火神社で、入江に入ってくるフェリー、それに遥か島根半島を眺めながら、時間を忘れて日本海の夕暮れを楽しみました。
夜は、幻想的なシルエットを見せる木造校舎に子供たちや卒業生、それにアートプロジェクトの見学者が行き交い、コンサートなどがおこなわれ、松浦さんや岡田さんと深夜まで語り合いました。
18日は、「イカ寄せ浜の伝説」公演当日でしたが、後ろ髪引かれる思いで朝の船に乗りました。

わずかな時間の滞在でしたが、アートによる休校の活用には地域を超えた共通のメリットと課題があること、その一方で「島」といっても置かれた状況は大きく異なり、それぞれの特異性と個性を大切にする必要があることを、あらためて実感しました。

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<開催概要データ>
[企画名]隠岐「美田小学校」× 松山「中島東小学校」
[実施日]2011年9月16日(金)-18日(日)
[召聘者]外浜まつり実行委員会【島根県隠岐郡西ノ島町】
[訪問者]徳永高志、吉岡美紀(アートプラットフォームえひめ実行委員会)【愛媛県松山市】

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<タイムスケジュール>
◎9月16日(金)
松山発08:30 → 境港着13:30(車)
境港発14:25 → 別府(西ノ島町)着17:50(フェリーしらしま)
◎9月17日(土)
西ノ島町滞在
◎9月18日(日)
別府(西ノ島町)発10:10 → 境港着13:10(フェリーしらしま)
坂港発14:00 → 松山着19:00(車)

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徳永写真2.JPG
<執筆者プロフィール>
徳永高志/岡山市生まれ。NPO法人クオリティアンドコミュニケーションオブアーツ(アートNPOカコア)理事長。茅野市民館、淡路人形座、久万美術館など各地の文化施設にかかわり、ときどき大学でも教える。著書に『公共文化施設の歴史と展望』(2010年、晃洋書房)など。