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メッセージ 2012.01.18

#07 柴田 尚(NPO法人S-AIR) 

AAFが始まった2002年から今まで、気づくと10年を越えてゆるゆると関わってきた。この間、日本のアートシーンの一端が大きく変化してきたと感じている。

かつて、アートシーンは大都市にあるイメージがあった。しかし、現在、日本では、昨年開催された瀬戸内芸術祭や越後妻有トリエンナーレのように地方都市において大規模な芸術祭が行われるようになり、動員的にも成功している。また、地方の島々まで小さなアートシーンが次々に形成されはじめ、しかも大都市にはない手法や資源を活かして独創的な情報を発信し、注目されるようになってきた。都市部においても、メインストリートというよりも、路地裏から文化発信するようになってきているのではないか。アーティスト、ギャラリー、マーケットがほとんどない場所にもアートシーンが形成されてきているのだ。もちろん、この背景にはインターネットやCGMの発達もあるだろう。

自分はこの変化を「アートシーンの毛細血管化」と呼んでいる。そして、この小さな場に光を当てる運動のひとつがAAFだと思っている。これらの動きは、欧米型の近代的な「アート」ではなく、伝統工芸や茶の湯など、日本古来の生活に根ざした「アート」に近く、いわゆるアジア的な文化運動かもしれない。

この10年の流れの中で、自分のAAFへの関わりも変化してきた。2002年の頃はロビーコンサートなど、音楽と美術など表現の実験的融合が中心だったのだが、公募が始まった2005年には沖縄との南北のエクスチェンジ企画「南の家、北の家。」、2008年には都心に集まる普通の人々と共に創るコミュニティスペースプロジェクト「OYOYO通〜夏の妄想」、そして昨年は「廃校アートセンター全国調査」を始めた。北海道の廃校数はなんと全国の1割を越えている。「廃校」は都市よりも当然、僻地に多いわけだが、見渡す限り人のいない圧倒的な風景を眺めながら「自分はこんなところにまでアートを求めて来てしまった」とときどき思う。AAFがはじまった当初、北海道のアートシーンなど他県の人々はほとんど知らなかった。しかし、現在はもっと小さな場にも光が当てられるようになってきた。相対的に自分の立ち位置も変わって来ているが、さて、AAFはこれからどこに向かうのだろうか。世界の中で、その真価を問う時期に来ているかもしれない。

 

 


 

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柴田尚(しばたひさし) 特定非営利活動法人S-AIR代表

平成11年、札幌アーティスト・イン・レジデンスを立ち上げ、平成17年7月、特定非営利活動法人S-AIRとして法人化。初代代表となる。現在までに33カ国77名以上の滞在製作に関わる。同団体は平成20年度の国際交流基金地球市民賞を受賞。その他、「SNOWSCAPE MOERE」をはじめ様々な文化事業を企画する他、平成21年度より北海道教育大学において「廃校アートセンター調査」を始める。NPO法人アートNPOリンク理事、Res Artis総会2012実行委員会委員、共著に「指定管理者制度で何が変わるのか」(水曜社)がある。