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コラム 2011.09.19

#03 田仲 桂(TSUMUGUプロジェクト)

このたびの東日本大震災によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被害を受けられました皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
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 私がAAFと出会ったのは2009年2月だった。参加団体でも何でもなく一般市民として軽い気持ちでたまたま覗いたにすぎなかった。それがあっという間に引き込まれ、全国のプロジェクトを巡るアートジャーニーをするまでにはまってしまった。

日本中の至る所で様々な思いを込めて色んなプロジェクトを展開している、実に面白く遊び上手で魅力的な大人たち。そんな人たちにたくさん出会った。彼らに多くを学んだ。世界を広げてもらった。仲間ができた。今年もそんなアートジャーニーをしていく予定だった。 

私は福島県いわき市に住んでいる。海のそばの昔からお米を作り続けてきた田んぼの風景のなかで生まれ育った。この地域には春の神輿・夏のじゃんがら・秋の獅子舞・冬の鳥小屋という土地に根付いた年中行事(郷土芸能)がある。ここで3.11に遭った。

3.11で慣れ親しんだ海沿いの地域は津波で跡形もなくなった。原発事故の深刻な問題を抱え福島はFUKUSHIMAになってしまった。住人たちは戻るに戻れず、それまで脈々と紡がれてきたコミュニティは再生できる見通しがたっていない。その土地で生き海に亡くなっていった人々を、残された者は自分たちの土地で追悼することもままならない現実が広がっている。

震災後、AAFがきっかけで知り合った東京や九州や沖縄の仲間たちとともにTSUMUGUプロジェクトなるものを立ち上げた。この土地で長い年月をかけて紡ぎ紡がれてきたものを、今この瞬間の一つ一つをも織り込み、またゆったりと紡いでいこうというもの。そしてこの夏は「じゃんがら念仏踊り」を追うことに決めた。

AAF2011のオープンパーティでも披露された「じゃんがら」はいわき市の指定無形民俗文化財の一つである。新たに盂蘭盆を迎える家々を廻り奉納される供養の踊りであり、市内一円で各青年会・保存会によって継承されている江戸時代から続く郷土芸能だ。市内の5つの青年会の協力を得て、じゃんがらを踊る人々とこの夏じゃんがらの来訪を受ける家々の双方の想い、ここ福島で新たな日々の営みを紡いでいく人々の想いを記録していく企画を立てた。豊かな海に亡くなっていった方々に捧げる追悼の唄であるとともに、震災や原発事故によって分断されようとしている土地の記憶をどう紡いでいくかを考える術の一つとして取り組む。

“アート”がどんな役割を果たすのだろう。AAFで見知った少しばかりの知識と経験と、何よりここで出会った力強い仲間たちとともに、福島でゆったりと、力強く、紡いでいく。

 

IMG_0305.JPGのサムネール画像

1978年福島県いわき市に生まれる。2006年明治大学大学院博士後期課程単位取得退学。2008年地元に戻り、仕事とアートツーリズムと国外逃亡と郷土芸能と昼寝を満喫しながら今に至る。この土地に刻まれてきた様々な記憶を掘り起こし、呼び起こし、物語を奏でることに興味がある。2011年春にTSUMUGUプロジェクトを立ち上げ、ゆるゆると紡いでいる。