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レポート 2011.08.29

2011交流支援プログラムレポート01 「沖縄旅行/前島アートセンターに会う旅」


AAF参加団体、ネットワーク団体の担当者が交流する「地域間交流支援プログラム」。それぞれの現場やまちの空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行うことができるように、と始まりました。現在では、新しい視点を獲得することで、あるいは別の視点が持ち込まれるによって、これまでにないプロジェクトが立ち現れようとしています。
AAF2011の交流支援プログラム最初のレポートは、前島アートセンター(沖縄県那覇市)と路地と人(東京都千代田区)による交流企画、報告は路地と人、安岐理加さんです。

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<レポート>

那覇市の前島地区を拠点に地域活性を目的として発足し、その後栄町に拠点を移し活動していた「前島アートセンター」へ、東京の小さな部屋で日常から立ち上がる文化事業を試みるオルタナティブスペース「路地と人」の安岐が、交流を目的としてうかがいました。

前島アートセンターは、2001年に日本ではまだ珍しい「アートNPO」という組織形態をとり、10年目をむかえる今年4月に、今年度で組織としての解散を決定し、拠点としていた栄町のスペース、おきなわ時間美術館も閉館しました。
組織としてそのような選択をした今、それぞれの関係者たちは今どのように前島アートセンターを見つめ、振り返っているのかを、路地と人の安岐理加が、社会学者の吉澤弥生さん、美術家の藤井光さんとご一緒に、前島アートセンターの関係者15人それぞれの日常生活の場、つまり職場や、アトリエ、ご自宅、そして飲み会の席に伺い、映像撮影を伴いながらインタビューを行いました。
みなさん快くインタビューにご協力くださり、10年前を懐かしみながら、発足当時の地域が抱えた困難な問題、厳しかった資金繰り、そして前島三丁目から栄町市場へ移ったときのこと、アートプロジェクトwanakio※のエピソードなどを話してくださいました。

なかでも印象的だったのは、前島三丁目の元自治会長さんが「前島アートセンターができたおかげで、この街に子供が遊ぶ姿が再び甦った。アートといわれてもすぐにはピンとこなかったし、相変わらずよくわからない。けれども、このまちに子供の声がもどってきたときに、なにか風穴が開いた気がした」というお話。
また、前島アートセンター理事である宮城潤氏からは、大学を卒業したばかりの若いアーティストにとって、沖縄では発表の場が限られているという現状をどうにかしたいという思いから端を発し、前島三丁目が抱えている問題との出会いを経て視点がかわったことで、新たな表現の場の可能性を自分たちの手で構築していったこと。しかしながらその先にあったさらに困難な課題と希望。それらのことを当時のエピソードともに伺い、また現在の勤務先である若狭公民館の活動事例を重ね合わせることで、組織解散後の展望を垣間見ることができました。

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前島アートセンター設立当初からの理事である国吉さんのご自宅では、ちょうど琉球大学でのワークショップのために来沖中のベルリン在住アーティスト、フローリアンさんが沖縄とベルリンで撮影・制作した映像作品の上映会を開催。2005年からwanakioにかかわっているフローリアンさんの映像作品を見ながら、みんなでwanakioを振り返りました。
国吉さんからは、ご自身がこれまでかかわってきた沖縄のアートシーンとこれからの動向について、また、沖縄の芸術、文化事業史における前島アートセンターの位置づけについて、お話をうかがうことができました。

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5日間の日程で15人へのインタビューはすこし駆け足になってしまいつつも、日々暮らしているところへ伺い、その姿をとらえながらの取材という手法により、スペースを消失しているからこそ見えてくる、彼らの日常から立ち上がるアートの実践を感じとることができました。彼らとの対話は、「南の楽園」と呼ばれてしまう沖縄ではなく、私たちがそれぞれの土地で暮らしていくうえで対面してゆく様々な出来事と、地続きの「沖縄」との交流でもありました。
前島アートセンター後のこれからの活動にますます注目しつつ、私たち「路地と人」も東京という地域において日常から立ち上がる文化事業を実践していきたいと思っています。
また、今回の交流記録を、様々な方々と共有できる映像と言葉の記録映像として流布させていくことを自らのミッションと感じ、アーカイブの方法を現在構築しています。

※「wanakio(ワナキオ)」
企画展示「まちの中のアート展」、 教育プログラム「トランス・アカデミー」を二つの柱として構成され、アートの創造力を活かし、現代社会において世代やジャンルを越えた様々な人々が主体的に関わることの出来る豊かな市民社会のモデルケースとなるための実験的なプロジェクトとして2002年、2003年、2005年、2008年と4回開催された。「wanakio」とは、 「okinawa(オキナワ)」を並べ替えた造語 で、地域にある素材を活かしつつ、その良さや特徴を内外部の視点により見つめ直し、新しい価値を見いだしていく、という意味が込められている。
主催: ワナキオ実行委員会(運営主体:NPO法人前島アートセンター)

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<開催概要データ>

[企画名]「沖縄旅行/前島アートセンターに会う旅」
[実施日]2011年7月14日(木)〜7月19日(火)
[招聘者]前島アートセンター【沖縄県那覇市】
[訪問者]路地と人【 東京都千代田区】
[報告者]安岐理加(路地と人)

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<タイムテーブル>

◎2011年7月14日(木) 安岐、吉澤、藤井の3人で15人へのインタビューを開始
◎2011年7月19日(火) インタビュー終了

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<執筆者プロフィール>

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安岐理加 「路地と人」の人/美術家
個人では美術家としての活動を行う傍ら、2010年より東京神田神保町にてオルタナティブスペース「路地と人」を共同で運営。展覧会や催しの企画運営を行う。
前島アートセンターでは2004年に個展「沖縄」を、また、wanakio2005、2008にも参加。