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レポート 2010.10.13

2010交流支援プログラムレポート10 「シマサガシ」

AAF参加団体、ネットワーク団体の担当者が交流する「地域間交流支援プログラム」。それぞれの現場やまちの空気にふれながら、たがいの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行っています。
AAF2010の交流支援プログラム10番目のレポートは、KOSHIKI ART PROJECT(鹿児島県薩摩川内市甑島)と外浜まつり実行委員会(島根県隠岐郡西ノ島町)による交流企画、報告は岡田毅志さん(外浜まつり実行委員会)です。

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<レポート>

今回「シマサガシ」と題して、私、岡田が《「甑島で、つくる。」KOSHIKI ART EXHIBITION 2010》2日目の甑島(こしきじま)を訪問しました。私が訪問に際して最も興味を持っていたのは、実行委員会の代表、平嶺林太郎さんが島出身のアーティストであることでした。さらに甑でのプロジェクトにおいて、スタッフや作家のみなさんが、それぞれどういう立ち位置を確認して関わっておられるのか、という点でした。
私はAAF参加の「外浜まつり2010」において、島に住んでいないアーティストでありながら運営にも携わっています。住んでいることで持つ共同体意識と、アートを介して持つ共同体意識、そのバランスが自分にも重なり興味深い点なのです。

まず、実際に甑島を訪問して感じたことをいくつか書きたいと思います。なにはともあれ、会期中の忙しい時に受け入れていただいたKOSHIKI ART PROJECTのみんさんに本当に感謝しています。プログラム中の忙しさは想像して余りあるところで、ただ感謝の一言です。
そんな中、私は22日に展覧会見学の巡回バス、石見神楽連の公演、夜のトークセッションと交流会、23日は自由に展覧会めぐり、関連ワークショップの視察、ナイトツアーに参加させていただきました。また23日晩には代表の平嶺さんとAAFから駆けつけられた加藤種男さんの3名で語る時間をいただきました。

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プロジェクト全体の印象ですが、島の外から来場する方々を歓迎しようとする実行委員会の姿勢を強く感じました。受付が港の観光案内所にあること。そこにレンタサイクルがあること。巡回バスがあること。宿泊客向けにナイトツアーを企画していること。点在する展示場所に必ず誰かがいること。宿、店、船の割引が受けられること。など、私たちが客人としてそこにいる空気を感じました。

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滞在中の嬉しい出来事のひとつが、平嶺さんのお父様と2、3時間話す機会があったことです。彼は息子の活動を応援し、一定の評価を与えつつも、自分は建設業の経営者だという目線で常に見ている、とおっしゃいました。この活動に加えて若者が島で生きられる仕事を産み出したいというご意見は的確でした。その会話の中から、この土地のコミュニティーがどういう繋がりで成り立っているのか、徐々に感じられました。「成人するまでは集落の年上の者が年下の面倒をみる」昔からの若衆宿的な側面が最近は減りつつあるとおっしゃっていましたが、少なくとも平嶺家には現在も強く受け継がれていました。
島の風景では、台風対策でしょうか、木造家屋に鉄筋コンクリート造りの家屋を併設しているお宅の多さや、コンクリートブロック塀が迷路のようにつくる路地に、私は個人的に親近感を覚えました。昭和の感覚とでも言いましょうか、建設業のお父様からはその風景の変遷についてもお聞きすることができました。
また古い白黒の写真には、子供達が海岸で玉石のくぼみに集まる情景がありました。旧正月に子供だけで玉石を積み、その内側で餅を焼く風習だそうです。その写真が甑の活動の一つ「玉石プロジェクト」と重なって感じました。集落の武家屋敷跡地区のまち並みは、庇が深い木造平屋建家屋に玉石垣が路地を作り美しい。私は活動に詳しくないのですが、その玉石垣の技術と伝統美を復活させていく取り組みだと思います。あのコンクリートの建造物やブロック塀はどう扱われていくのか、今後が興味深いです。

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これらの時間を経てから、代表の平嶺林太郎さん、加藤種男さんと話す機会をいただきました。そこで平嶺さんの立ち位置が確認できた気がします。彼は甑の参加アーティストにとっては「兄貴」だと思います。プロジェクトでは実質ディレクターの役回りをしていますが、誘致する作家は「甑に来ればおもしろく変化しそうな人」という基準で声をかけておられます。アーティストを育てているかのようにも感じました。可能性に期待するからには企画サイドは失敗も含めて許容しなければなりません。その点について、実行委員の多くが集落出身であり、甑一流の「兄貴」の役割を自然体で受け入れておられるように感じました。これは他の関係者の方のご意見もうかがいたいところですので、あくまでも私見として記します。
また、先に触れたお父様の会社に飾られていた絵の作者が「自分は甑にきて変わった」と語ったそうです。そのことが如実に表しているように、7年目を迎えた「甑島で、つくる。」は、意図しているかどうかは別として、すでに一つの教育プログラムとしても機能しています。このKOSHIKI ART PROJECTのように「兄貴」が存在できる地域意識を基本にして、アートという共通意識を持つ活動体をオーバーラップさせ、そこで何ができるのかを発見していく活動は、日本の学校教育を補完する生涯学習と位置づけることができると感じました。これらの見聞をいただけたことはとても大きな収穫でした。ほんとうに「ありがとう」です。

※写真3点とも ©コセリエ

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<開催概要データ>
[企画名]「シマサガシ」
[実施日]8月22日(日)~8月24日(火)
[招聘者]KOSHIKI ART PROJECT(平嶺林太郎)
[訪問者]外浜まつり実行委員会(岡田毅志)
[報告者]岡田毅志

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<タイムテーブル>
◎8月22日(日)
甑島到着。展覧会見学の巡回バス、石見神楽連の公演、夜のトークセッションと交流会。
◎8月23日(月)
自由に展覧会めぐりと、関連ワークショップの視察、ナイトツアーに参加。
◎8月24日(火)
甑島から帰宅。

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<報告者プロフィール>
岡田毅志(アーティスト/外浜まつり2010)
外浜まつり2010参加アーティスト。外浜まつり2007~2009までは、マネージメントも担当。外浜まつりでは2009年から「砂鉄の物語」と題した地域でのアート活動を継続中。