レポート RSS

レポート 2010.09.29

2010交流支援プログラムレポート05 「映像の視点から考える」

各地域間の自発的な交流を促すために、AAF2006より実施している「地域間交流支援プログラム」。それぞれの現場やまちの空気にふれながら、担当者がお互いの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行う交流の場が全国各地で生まれています。
AAF2010の交流支援プログラム5番目のレポートは、ひょうたんからKO-MA(滋賀県近江八幡市)と、外浜まつり実行委員会(島根県隠岐郡西ノ島町)による交流企画、報告者は岡田毅志さんです。
 
 =========================================================

<レポート>
交流した方々に自由記述で感想を頂きました。
全て掲載すると長文となるため、今回のテーマ「映像の視点で考える」に関係する記述のみ抜粋します。(全文は実行委員会が保存しています)
特に、長岡氏からは映像作家の視点でレポートを、藤田氏はプロデューサーの視点から島前の地域資源とプロデュースアイデアを非常に多角的にコメントして頂きました。

●長岡野亜氏レポートより
 〜<前文略>〜
■島内ツアー
島内の集落や名所を巡り、私の母が教えていたという小学校にも案内してもらった。今は「若者宿」という町内の研修施設として利用され、建物は改修を加えたものになっていたが、体育館や朝礼台は当時のまま残っていた。〜<中略>〜母が見せてくれた写真の中には、映画「二十四の瞳」とオーバーラップするような、若い女教師と数人の子ども達が海の前で笑っている姿が映っており、その写真の残像が私を隠岐へ導いたようにも思う。
西ノ島でも子どもの数は減少していて、3校あった小学校が合併して、1校になるそうだ。今年度で閉鎖される美田小学校を見学したが、映画のロケにも使えそうな美しい木造校舎。倉庫にしたくない、と嘆く松浦さんの思いがなんとかならないものか。

sotohama03.jpg

■夜の焼火神社例大祭 
例大祭では、地元の人達が演じる隠岐島前神楽が奉納されていた。二時間に渡る神々の歌舞。松新さんも楽士、演者として出演されていた。5歳ぐらいの子ども達が、お爺さんの傍らで楽士を担当している。あくびをしながら鐘を鳴らしている姿がなんとも愛らしく、「あぁ、こうやって伝わっているんだな」、と嬉しくなってしまった。後日、宮司の松浦さんにその話をすると、西ノ島では、映画『ほんがら』の舞台の島町のように、祭離れが進んではいない、出ないといけないようなプレッシャーがまだ存在している、という話。ここでは、まだ共同体が生きている。

sotohama01.jpg

■地域との関わり
藤田・岡田・田島氏と、お互いの活動の意見交換をした。
「外浜まつり」の活動は当初、ヨソモノのアーティストが隠岐にやって来て展示をする取り組みから始まったという。しかし10年もの年月の間に「なぜこの場所でアートなのか」、という思いを岡田氏たちが自問自答しながら現在進行形で変化し続けている点が興味深い。
前日に「外浜まつり」の前年度のアート活動「砂鉄の物語」の現場をめぐるツアーを再現してもらった。外からの持ち込み展示ではなく、アーティストが地域との関わりを通じて、何かを発見し、新しいものを生み出してアウトプットしていく、というプロセスが近江八幡での映画作りに共通するように思えた。
「みんな常に学んでるんだよ」と田島氏。そう、私たちも常に試行錯誤しながら活動を進行していき、その中から学んでいることが多い、と共感する。
午後からは岡田・田島氏のアート活動に同行する。今年の外浜まつりに向けての取材で、海士町(中の島)の隠岐神社と郷土資料館を訪問。昨年の「砂鉄の物語」から進展して、今年は刀職人の沖光さんにアプローチするそうだ。翌日は沖光さんや、そのご家族の方々にインタビューをしたそうだ。自分たちの惹かれる人から何かを聞き出して形にしていく、私はそれを映画にしていくわけだけど、岡田・田島氏が、どのような形にしていくか、今後の活動が楽しみだ。
この日は、松新さんのお宅に泊まらせてもらった。岡田・田島氏はここで自炊しながら滞在させてもらっているという。〜<中略>〜ヨソモノと地元の人々とを繋ぐ家。こういう場所があるから岡田氏たちの活動が続けられているのだと思った。

sotohama02.jpg

■最後に
〜<中略>〜 映画との可能性はいくつかあるとは思う。ドキュメンタリー映画は何度も通わないといけないので、なかなか難しいと思うが、一週間の撮影でドラマの映画を作ってみてはどうか。神楽の歌舞のために週に何度か練習をしているという。何かを演じる、ということはできるのではないだろうか。

●藤田知丈氏レポートより
 〜<前文略>〜
ここで、ようやく今回の交流プログラムの主題「映像の視点から考える」にたどり着く。「ほんがら」や「遺言」で試みた手法や経験は、「砂鉄の物語」全体を映像作品化するにせよ、鍛冶職人を主役にしてその人生を描くドキュメンタリー作品をつくるにせよ、活かせるところは間違いなくあると思う。
個人的には、今年以降もがんばって「砂鉄の物語」を継続・完結させ(たとえば地元行事や学校連携行事として毎年少しずつ外浜の砂鉄から製鉄し、それを外浜海岸に並べて永続展示できるようにするとか、外浜海岸に巨大磁石を埋め込むなどして「砂鉄を楽しめる海岸」化するとか...)、その顛末をドラマ映像化して、港の大型モニタで流したり、地元テレビ局に売り込んだりしてみたらいいんじゃないかと。
一番の問題は映像作家の確保。長岡氏も長期滞在は難しいだろう。
しかしまぁ、何事も願い続ければ叶うと信じて、とにかく一歩ずつ、前進あるのみ。
 〜<略>〜

●田島史朗氏コメント
藤田さん、長岡さんありがとうございます。
プロデュサーとしての藤田さんと、監督としての長岡さんの関係や、地域との接点の話がとても参考になりました。
それぞれの役割が、きちっと役を果たす事で良いものができる。
外浜まつりでも参考にさせて頂きます。

●報告者コメント
今回の交流の目的は、あるコミュニティーに異質な視点を入れることでした。コミュニティーとは地理的な地域であったり、なんらかの所属意識や、仲間意識とか訳してもいいと思います。その意味で、長岡氏との会談でドキュメンタリー映画「ほんがら」や「遺言」を制作している時に、活動コミュニティーで人々と関係をつむいでいく手法は興味深い話でした。カメラを向けつつ関係を作ることは、そこにいる「個人」が信用される瞬間でしょう。
また藤田さんからは映像の可能性以外に、島のホテル施設活用法、地質生態系からのアプローチ案、西ノ島内の心理的コミュニティー(地区)単位の差異の活用と広域文化圏である島前ブランドへのボトムアップ方法、島根県八雲町の国際民族音楽祭「庭火祭」を例にした隠岐での市民の祭りの可能性など、地域プロデューサーの視点から非常に多くの提案を頂きました。これらの感性は、ぜひ実行委員に共有したいと思います。
また会談の中で「地元」の定義についても話題にのぼり、地理的な地域、心理的な地域など、捉え方によって地域の範囲が変わることや、時に複数の地元にまたがった状態になるなどの意見を交わしました。これらはアーティスト、地元住民、地域プロデューサーほか、複数の関係者が自分の立ち位置を確認する重要な視点であると感じられました。さらに、長岡、藤田、両氏は幼少の頃から島根にご縁があり、すでにやや「地元」に近い感覚をもっておられ、このことも今回の交流がより具体性をもった要因だといえます。こういう交流は大変重要だと改めて実感しました。
最後になりましたが、このような機会をご提供頂きましたAAF実行委員会、ならびに関係の皆様、ご訪問頂いた長岡、藤田両氏に、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

------------------------
<開催概要データ>
[企画名]「映像の視点から考える」
[実施日]2010年7月23日(金)〜25日(日)
[訪問先]島根県隠岐郡西ノ島町各所
[招聘者]外浜まつり実行委員会(案内役:松浦道仁、松新俊典、岡田毅志、田島史朗)
[訪問者]ひょうたんからKO-MA(招聘者:長岡野亜、友情訪問:藤田知丈)
[報告者]岡田毅志

------------------------
<タイムテーブル>
◎7月22日(木)(前日入り)
12:00 藤田氏到着。西ノ島町の波止地区散策。
◎7月23日(金)
12:00 長岡氏到着。西ノ島島内視察。[長岡、藤田、田島、岡田の4名]
(前年度のアート活動「砂鉄の物語をめぐるツアー」を再現する)
20:00〜23:00 焼火神社例大祭。[長岡、藤田、松新(楽士)、松浦(宮司)、他外浜まつり関係者7名が参加]
(焼火神社例大祭にて隠岐島前神楽奉納を見学。その後関係者と交流)
◎7月24日(土)
9:00〜12:00 意見交換。[長岡、藤田、田島、岡田の4名](実行委員、松新俊典宅)
(主に、藤田氏より、ひょうたんからKO-MAの活動説明と島根県内での関連活動について説明。)
ここまでで藤田氏帰宅。(長岡氏は引き続き交流)
14:00〜17:00 海士町(中の島)の隠岐神社と郷土資料館訪問。[長岡、松新、田島、岡田の4名]
(今年度のアート活動に同行。)
20:00頃〜 意見交換。[長岡、松浦、田島、岡田の4名](松新宅)
(感想や意見を気兼ねなく話す時間をもつ)
◎7月25日(日)
午前 長岡氏帰宅

------------------------

okada_face.jpg
<執筆者プロフィール>
岡田毅志(アーティスト/外浜まつり2010)
外浜まつり2010参加アーティスト。外浜まつり2007~2009までは、マネージメントも担当。外浜まつりでは2009年から「砂鉄の物語」と題して地域でのアート活動を継続中。