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レポート 2010.09.06

2010交流支援プログラムレポート04 「天若湖アートプロジェクトに学ぶ企画の立て方/ボランティア・コーディネート」

各地域間の自発的な交流を促すために、AAF2006より実施している「地域間交流支援プログラム」。それぞれの現場やまちの空気にふれながら、担当者がお互いの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行う交流の場が全国各地で生まれています。
AAF2010の交流支援プログラム4番目のレポートは、コミュニティアート・ふなばし(千葉県)と京都の天若湖アートプロジェクト実行委員会による交流企画、報告は篠塚明子さん(コミュニティアート・ふなばし)です。
 
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コミュニティにおける課題を発見し、アートによって創造的に解決することを旨としているコミュニティアート・ふなばしでは、本年より、アートプロジェクト「歌舞伎町2020」を事業の一つとして運営しています。
このプロジェクトにスタッフとして関わり、また大学在学中に「記憶」をテーマに研究を続けるなかでアートプロジェクトと出会った私は、歌舞伎町の抱える課題に「記憶の分断」、すなわち芹沢高志さんがおっしゃるところの「記憶喪失都市」としての課題を見ています。
そのような問題意識から、今回の交流支援プログラムでは「記憶とアート(そして記憶から続く公共性)」をテーマにしたプロジェクト、天若湖アートプロジェクトに参加させて頂きました。

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8月7日(土)
10:00〜
日吉駅から車で約10分の公共施設「スプリングスひよし」にて、開始前の全体ミーティング。
天若湖アートプロジェクトには、実行委員会の前身である「桂川流域ネットワーク」関係者の方をはじめ、ダム管理所職員の方、近郊の複数の大学からの大学生/大学院生/教職員の方、また個人で関わっておられる方など、実にさまざまな方が参加されています。
実行委員長のさとうさんの「自分が知っている人とだけ、自分の持ち場だけ見ていれば良いという気持ちでなく、初めて会う人ともどんどんコミュニケーションを取って、プロジェクト全体に対する理解を深めてください。そして今以上にプロジェクトを好きになってください」という言葉が印象的でした。
11:00〜
メインインスタレーション「あかりがつなぐ記憶」にともなう、足下あかり点灯のための「牛乳パックあかりワークショップ」に参加。近隣の方はもちろん、京都市内から来られる子どもさんもいらっしゃいました。

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18:00〜
世木林地区で足下あかり点灯。
点灯したあかりが、暮れてゆく世木林のなかで、湖面のあかりとともに浮かびあがってくる情景は、非常に感動的でした。
19:30〜
周遊バスで湖面あかりを見に来られたお客様をご案内。お客様同士での「楽河の(集落に住んでいた)********です」などのご挨拶も聞かれ、元住民の方にとっての社交の場としても機能していることを再認識しました。
22:00〜
足下あかり消灯作業ののち、有志によるナイトウォークへ。

8月8日(日)
9:00〜
宿泊所、兼ギャラリーである旧殿田郵便局にて、全体ミーティング。

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11:00〜
記録展示「水の杜展」にともなう、ぬりえワークショップ、来場者案内など。
18:00〜
世木林・足下あかりの設置/点灯。前日よりも風が強く、あかりの保持に骨を折りましたが、自然の多い場所で行うプロジェクトの予測不可能性と、困難なときこそスタッフ同士のコミュニケーションが深まることをあらためて実感し、大変楽しく、また身になる体験でもありました。
前日以上に、バスツアーでなく、個人で来られるお客様が多いように思いました。

shinozka3.jpg

21:30〜
撤収作業。個人で観覧に来られた車10台近くとすれ違いました。

8月9日(月)
9:00〜
全体の撤収作業。
13:00〜
最終ミーティング。解散。

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3日間、天若湖アートプロジェクトに関わらせて頂いて感じたことは、実にさまざまな立場の方がプロジェクトに関わっていらっしゃるということ、そして「記憶」を「つなぐ」ための仕掛けが、実に丁寧に、何層にも重ねられているのだということでした。
天若湖アートプロジェクトにおいて、メインであるインスタレーションの「あかりがつなぐ記憶」以外にも多くのプログラムが同時多発的に進行していることは、誤解を恐れずに言えば、春日局の「七色飯」なのだと私は思いました。虚弱で好き嫌いの激しかった徳川家光に対し、乳母の春日局は毎朝七種類の飯を用意して、その日の気分で選べるようにしたと言います。天若湖アートプロジェクトも、「どこから入るか」は、入る人にとって選択可能なだけの幅が十分に用意されています。
最もシンボリックなのが、湖面にかつての集落を浮かび上がらせる「あかりがつなぐ記憶」であることに疑いの余地はありませんが、その他にも、多くのきめ細やかなプログラムが重層的に設計されていること、そしてプロジェクト全体を通して、ダム反対でも賛成でもない多種多様な人が関わることによって、アートプロジェクトとしての、ある種のフェアネスを担保しているように感じました。

<開催概要データ>
[企画名] 天若湖アートプロジェクト「記憶とアートをめぐって」
http://amawakaap.exblog.jp/
[実施日] 2010年8月7日(土)〜9日(月)
[招聘者] さとうひさゑ╱天若湖アートプロジェクト実行委員会、アート・プランまぜまぜ【京都府】
http://mazemaze1.exblog.jp/
[訪問者] 篠塚明子╱コミュニティアート・ふなばし【千葉県】
http://communityart.cocolog-nifty.com/news/

<タイムテーブル>
篠塚個人の参加プログラムについては上記の通りです。
以下、プロジェクト全体のタイムテーブルについて記載させて頂きます。

◎展覧会/ワークショップ「水の杜展」
8月6日(金)10:00 〜 8月9日(月)12:00
会場:スプリングスひよし2Fギャラリー
これまでの天若湖アートプロジェクトの取り組みを記録した写真/テキスト/映像資料や模型などを展示する他、日吉のまちをテーマにしたイラストに色を付けていくぬりえワークショップを開催。

◎上記以外
8月7日(土)
10:00〜14:00 牛乳パックあかりワークショップ
会場:スプリングスひよし2Fギャラリー
インスタレーションイベント「あかりがつなぐ記憶」に使用する足下あかりに絵を描いたり着色を行うワークショップを実施。

10:00〜17:00 動物バッヂ工作
会場:スプリングスひよし2Fギャラリー
日吉の自然に触れつつ、木工の動物バッヂに色を塗るワークショップを実施。

15:30〜17:30 「Myカペットを作ろう!」
会場:旧殿田郵便局ギャラリー
7日・8日の同会場でのカルティベーションパートナーズによる「みんなのカッパ展」と連動して、カッパの手踊り人形を作るワークショップを実施。

日没(18:00頃)〜翌日の出(6:00頃) 「あかりがつなぐ記憶」
会場:天若湖湖面(旧 世木林・楽河・沢田 各集落)
日吉ダム建設によりダム湖に沈んだ集落を、家を表すあかりによって2晩だけ再現するインスタレーション。周遊バス(19:15〜20:25の便と19:45〜20:55の便の2本)の企画・運営とガイド、足下あかりインスタレーション「世木林・あかりのみち」(18:30〜21:30)なども同時に行う。

8月8日(土)
11:00〜15:00 桂川川遊び
会場:桂川(スプリングスひよし歩道橋下)
川でのEボート体験やストーンペインティングを実施。

日没(18:00頃)〜翌日の出(6:00頃) 「あかりがつなぐ記憶」
(7日と同様)

<執筆者プロフィール>
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篠塚明子
立教大学法学部卒。本年2月より、コミュニティアート・ふなばしにスタッフとして参加。現在、アートプロジェクト「歌舞伎町2020」を担当。