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AAF通信 2010.08.12

AAF Café vol.7  レポート

2010年8月9日(月)、AAF Café vol.7 を開催しました。

AAF Café vol.7は、すみだ川アートプロジェクト<SUPER JULY★地域密着型映画祭>との協働開催。地域にこだわり、地域に根付いて、地域の人たちと深く関わりながら製作された映画、『船、山にのぼる』、『島の時間』、『ほんがら』を連続上映、上映後、こうした映画作品はどのように企画製作され、何をもたらしたのか、企画から現在までの上映活動を通して見えてきたものを語っていただこうという企画です。

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この日は、『ほんがら』のプロデューサー藤田知丈さん、『島の時間』のプロデューサー下地昌伸さん、そして仲村颯悟監督をお招きし、コーディネーターとして芹沢高志AAF実行委事務局長が3人にお話をうかがう形ではじまりました。

「ほんがら」復活

藤田知丈さんは自らを「地域プロデューサー」と位置づけます。滋賀県近江八幡市を拠点とする地域プロデューサーグループ「ひょうたんからKO-MA」事務局長として、また近江八幡市立マルチメディアセンター所長として、日々活動されています。
映画『ほんがら』制作のきっかけは、約50年前に途絶えてしまった近江八幡市島町の「ほんがら松明」復活を試みる地元老人たちの「写真に残してほしい」という相談を受けたこと。「ほんがら」とは千数百年前の故事に由来する、祭に奉納する煙突状の巨大松明のことで、かつては毎年地域の若者たちがつくりあげていたものです。
藤田さんは「写真は残っても文化は残らない」として、写真による記録ではなく、映画制作を提案しました。
文化遺産のアーカイビングではなく、地域の「誇り」として、次世代に生きたまま引き継ぐことはできないか、ほんがら松明復活という「現象」の記録だけでなく、復活させた老人たちの「思い」や、ほんがら現役の頃の地域の「記憶」をつむぎだすことはできないか、と考えてのことでした。
そして、映画をつくる過程で、そして上映活動を通して、実際に地域が動いていった様子を紹介されました。
なによりも、一度限りのほんがら復活のはずが、映画づくりを通して「ほんがら松明」の伝統を次世代が引き継ぐことを決意したこと、地域の課題を共有し、地元住民の地域への「誇り」が高まったこと、たとえば「ほんがら松明」同様、簡略化されて地域の役員等によって続けられていた地域の祭礼「いもち送り」を、町民総出で行う旧来の伝統的なやり方で再現するなど、むらおこしのムーブメントが次々とはじまっていることなどです。

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「遺言YUI-GONプロジェクト」

最後に現在進行中の「遺言YUI-GONプロジェクト」についても紹介されました。このプロジェクトはAAF2010参加プロジェクトでもあります。
映像づくりに関心のある地元公募の市民による制作で、映画監督原一男さんの指導の下、地元在住のお年寄りを取材しています。単にメッセージをしゃべってもらうのではなく、老人自ら「行動」してもらう、取材を通じ、スタッフが老人から多くを学ぶ、カメラを向けられることで老人も「思い」を強くする、そうした関係を通して、ともに成長し協働する映画作りを続けています。今年中の完成を目指しています。

プロデューサーを引き受ける

下地昌伸さんは宮古島唯一の映画館、そして日本最南端の映画館「シネマパニック宮古島」の支配人です。この島の出身で、島に戻り、公共ホールの管理の仕事を経て、4年前に独立して映画館を立ち上げました。けして楽な経営ではないけれど、島の人々に映画を楽しんでほしいとの一念で続けてきたとのことです。そして鑑賞ばかりでなく、映画を通して宮古島の存在を発信できないかと、宮古島フィルムコミッションの立ち上げに尽力しました。
あるとき仲村颯悟監督が中学1年のときに制作した『かじゅまる』を偶然に観て感動。仲村監督のブログを通して2人は知り合います。そして監督を宮古島に呼び、「かじゅまる」を自身の映画館で上映したいと相談しますが、それがいつしか宮古島を舞台にした映画制作の話にふくらんでいきます。結果、沖縄本島出身の仲村監督が宮古島を訪れた際、とりわけ印象に残っていた池間島を舞台に映画をとることを決め、下地さんは初プロデューサーとして実現に向け奔走することになります。仲村監督も、限られた予算、日程、そして沖縄本島とは違う言葉のイントネーションなどに苦労しつつ、地元住民と協力してつくりあげたのが「島の時間」でした。

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次へつなげる

下地さん、仲村監督からは、映画制作を通し、また台風接近下の完成披露上映会で2日間1600人を動員した感触から、地域の人々の変化を感じたといいます。下地さんは地元の協力関係を強化し、資金調達の方法をさらに学んで「こうした取り組みをこれからも続けていきたい」と語りました。
なお、仲村監督からは、小学校3年生から子どもたちだけで映画制作を続けてきた経緯、そして今秋公開される、劇場用映画第1回監督作品『やぎの冒険』について語って下さいました。

また、2日間の上映を通して、東京近郊在住の宮古島出身者、関係者の方々が多くかけつけてくれたことも印象に残りました。

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作品紹介】
ほんがら』 監督:長岡野亜(滋賀県近江八幡市島町/89分/2008)
滋賀県近江八幡市島町。約60世帯の家々からなる農村集落。高齢者が人口の約3割を占めるこの町で、65歳以上の高齢者で構成される「島町老人クラブ」が一念発起し、約50年前に途絶えた島町伝統の「ほんがら松明」を復活させるまでを追いかけた感動ドキュメンタリー。老人たちからの最後のメッセージ、その想いに応えるかのように動き始める現代の青年たち。郷土へのゆるぎない誇りと愛情があふれる作品。
(89分/監督:長岡野亜/2008年)

島の時間』 監督:仲村颯悟(沖縄県宮古島/本編+メイキング約60分/2009)
小3のころに映画の撮影を始め、これまで約30作品余を制作している中学生の映画監督、仲村颯悟(りゅうご)君(沖縄県沖縄市在住)が、宮古島に滞在し、地元の実行委員のメンバーとともにつくり、上映会会場を映画による感動と興奮に包みこんだ衝撃作品。東京では初めての公開。市下地の来間島が舞台で、小学生の仲間6人のうち、1人が沖縄本島へ転校が決まり、プレゼントを贈るため、島に伝わる伝説の貝殻を探す物語。
(本編37分、メイキング23分/監督:仲村颯悟/2009年)