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レポート 2010.02.24

交流支援プログラムレポート8 「風渡る都市・青森空間スケッチ:アート屋台PJ meets 空間実験室」


各地域間の自発的な交流を促すために、AAF2006より実施している「地域間交流プログラム」。各地の現場やまちの空気にふれながら、担当者同士あるいは実行委員と担当者がお互いの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行う、交流の場が全国各地で生まれています。AAF2009の交流支援プログラムレポート第8弾は、「こどもの時間・こどもの領分 stage1」(青森)と「アート屋台プロジェクト」(宮城)との交流企画をお送りします。

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異なる土地で、同じアーティスト、同じ屋台という装置を使う2つの団体。故に、より顕著に地域や団体の特色が出るのでは、というコンセプトの元、「梅雨がない」盛夏の青森市を訪れた。
訪問の2日間は、小山田徹氏(美術家)によるワークショップ最終日に当たる。そこで到着してのち、早々に空間実験室の見学も切り上げ、会場の「ちびっこ広場」に同行した。


Y01_kukan.JPGのサムネール画像




・・・夏の青森市は海風が吹抜ける、空隙(スキマ)が大きな街である。
十分広い道でも一方通行が多く、家々の軒は適度に離れている。これは全て雪の捨て場を確保するためだという。私は真冬には一変するという情景を頭に描きながら、雪の抜き型としての真夏の都市をスタッフと共に歩いた・・・。

「ちびっこ広場」を見渡せば、真ん中の土の広場は太陽に晒されて、眩しく光っている。ここは、きむらとしろうじんじんの野点など、数々の企画の舞台となって「開拓」された公園である。左右を民家に囲まれ、前後を線路と道路に挟まれ、小さなスタヂアムのようにも見える。早速持ってきたパーツを組み立て、日陰となる屋台を作り上げ準備完了。日焼けした小山田氏が広場を眺める傍らで、この企画の骨子もよく把握できないまま、私は決闘の立会人の様にただ「始まり」を待っていた。

やんちゃそうな二人の少年が広場に現れた。やがてポツリポツリと他のこども達も集まってきた。広場で向かい合うこどもとおとな。そして、鬼ごっこによる真剣勝負が始まった! 逃げ惑うこどもと、追いかけるおとな。笑うこどもに、転ぶおとな。砂塵を上げ、汗だくになっている群像を前に、私は当惑し、何が起きているかを観察し、やがて暑さで考えるのを止めた。
転んだおとな(日沼智之氏)が足を痛めたので、見学を中断して病院に運ばねばならなかった。車が到着するまで心配した目でみつめるこどもと、氷や湿布を提供する近所のおとな。結局、街の文化や習慣を、薬剤を買い出しに同伴した整骨院の先生から教えてもらうことになった。

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そんなハプニングに見舞われた1日目であったが、なぜそこまで、という問いかけに、包帯を足に巻かれた同氏は答えた。
「本気でなければこどもはすぐ見抜く。真剣だからこそ対等な関係が築ける。」

公共の広場で、人が出会い、関係を築くのはそう易しいことではない。占有しない、という管理側の都合ばかりが肥大化し、むしろ「接触しない領域を生むための空地=公園」の傾向すら漂う。本来こどもにはそんな領域を軽々と飛び越えてゆく力が備わっているのだが、社会のシステムに取り込まれ孤立し、弱体化甚だしい。
小山田氏が「開拓」し続けている共有空間の獲得は、ここ青森では地面に刻んだゲームの囲い線によって行われている。こどもに媚びず、おとなに甘えず。鬼ごっこで生まれる信頼が互いを結んでいる。仮に、場+関係性=共有空間とするならば、遊びの時間とはいえども、ひなびたちっぽけな広場も生き生きとした体温を宿すのだ。
図らずも負傷というハプニングで生まれた救急の手当ての円滑さが、何よりもそれを物語ってくれた。ワークショップが日を掛けず近所に認知されていなかったら、こうはいかなかっただろう。

街とは何か?
街という対象を測るために、我々は言語で埋めることに頼りすぎてはいないか?

・・・都市も自然世界(環境・宇宙)のひとつと考えるならば、人間の内面世界(感情・想像)との接点を失った社会は今、孤独で歪んでいる。その再生の切り口としてアート以外に純粋に手がかりを得る術はないのではないか・・・?

概念的で顔のない「街」に大声で呼びかけるのではなく、隣り合うひとりひとりがつながることから始めること 。この2つの団体が同じ美術家と共に取り組んでいる大きな共通点とは、「屋台」をシンボルとにした、公共空間の人の手による開拓なのかもしれない。
空隙を埋めるのではなく、人と人の創造的な出会いの軌跡によって街の輪郭線を描くような空間実験室の試み。その先人に敬意を表しつつ、大いに共感を得た交流となった。
一方で、2日目には食をテーマにしている私たちの為に、新鮮な海産物が並ぶ朝市に連れていって頂き、美味しい朝食を堪能することができた。また、日沼禎子さんの計らいで国際芸術センター青森(ACAC)を視察することも叶い、短い滞在期間でも充実した2日間を過すことが出来た。

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この唐突な来訪者を自然体で受け入れてくれた、日沼さん夫妻を始めとする空間実験室の皆さん、小山田徹さん、そしてチャンスを作っていただいたAAF2009に心より感謝申し上げたい。

(この数ヶ月の後、宮城に小山田氏を招き、この交流での体験を下敷きに我々のプロジェクトは形作られていった。そのいくつかの失敗と確かな手がかりを得て終幕した今だからこそ、青森での滞在の意味をより深く実感し、この言語化難しいレポートをまとめることが出来た。)


<概要>
招いた側:空間実験室2009実行委員会(「こどもの時間・こどもの領分 stage1」青森)
訪れた側:アート屋台プロジェクト実行委員会(「アート屋台プロジェクト」宮城)

実施日:2009年6月27日〜28日
場所:空間実験室、ちびっこ広場など青森市古川町各所にて
招聘者名:海子揮一(アート屋台プロジェクト実行委員会代表)


<執筆者プロフィール>

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海子揮一
建築家/アート屋台プロジェクト実行委員会代表。
海外放浪の後、設計活動を開始。事務所設立後、地元ホールとの協働やハコモノ行政へ反発する住民団体との関わりをきっかけに、人と建築と地域の界面の開拓をテーマに活動を続けている。