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交流プログラム 2009.11.19

交流支援プログラムレポート6 「つくりてをつくる!」2

各地域間の自発的な交流を促すために、AAF2006より実施している「地域間交流プログラム。各地の現場やまちの空気にふれながら、担当者同士あるいは実行委員と担当者がお互いの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行う、交流の場が全国各地で生まれています。AAF2009の交流支援プログラムレポート第6弾は、「コミュニティアート・ふなばし」(千葉)と「ハート・アート・おかやま」(岡山)との交流企画をお送りします。

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「いいアートの基準とは、なんじゃろうか?」真鍋島の86歳の郵便局長、真鍋禮三さん。将来に不安を抱え、悶々とした気持ちでいた千葉から来た山浦彬仁23歳の顔を見るなり、真鍋さんは「根本的な問い」を私に聞いてきた。うーん、いいアートの基準???
8月7日から15日までの9日間、AAF企画間交流支援プログラムにて「アートリンク・アートパーティ2009」の会場、笠岡諸島の白石島・真鍋島にて、研修をさせて頂きました。
アートリンク制作現場での一週間は、生命の循環、それを繋ぐ文化、偶然の出会いが生活に根づき日常を豊かにするアートプロジェクトの力を改めて気付かされる、かけがいのない時間となりました。

「たき火をするときは、枯草を火の上にのっける」展覧会会場となる草が鬱蒼とした遊休地。草を刈った後、草を燃す。火をつっついては消してしまう自分に焚き火のコツを教えて下さったのはハート・アート・おかやまの田野智子さん。朝から燦々と照りつける太陽の下、砂をこし、草取りをし、幟を立てて、部屋を掃除...サウナに入った後のように気持ちの良い汗をかきながら、夕日とともに海で汗を流し、田野さん、真部さんがつくって下さった夕飯を食べ、夜は島に伝わる白石踊りの練習、帰りに砂浜で海ほたるを見つめ、シャワーを浴びたあとパソコンに向かってデスクワークと、アートプロジェクトについてハート・アート・おかやまスタッフと延々とディスカッション...頭と体をフル回転させて島で過ごした1週間。制作の現場で、皆で起き、働き、遊び、学び、時間を重ね共に生きることから、日常から跳躍しかつ、日常に還元されていく循環を見ました。

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アートリンクは人と人の関係性をテーマに作品を作り上げるプロジェクトです。日々の営み、出来事には一人一人の膨大なテキストがあります。時間軸を超えて過去と未来と現在の私を繋ぐテキストの1つ1つを丹念に抽出し、作品を仕上げるプロジェクト。瀬戸内の海のきらめきと同時に、私たち一人一人の生の結晶が作品となる。そこには仕事も労働も活動も区別なく、うちも外もなく、ただただ日々の営みの生活があり、流れている時間がある。ハンナ・アレント「人間の条件」の〈活動〉を担保しているのが、文化であり、アートプロジェクトの可能性であることをまざまざと感じ入りました。一週間の生活で一番驚かされたのは、島の人たちが、私たちの間に常に入ってきて下さるという、島のホスピタリティです。作業をしていると、多くの人が「何をしとるん?」と声をかけて下さる。その偶発的な出会いから、いろんな会話が始まり、ついには「自分はこんなことをやっているけど...」「それだったら私が教えてあげる」といつしかプロジェクトの主体として参画していく。偶発的な出会いから、内在していた人の創造性が解き放たれ、日常に溶け込み、次から次へと新たなアイディア、未来へのビジョンが浮かびあがってくる。皆で作って皆で楽しむ。生きる喜びと悲しみも分かち合う。アート、文化を軸にした学びの共同体としてアートリンクプロジェクトが島の生活、日常に根づいていました。

アートリンクプロジェクトが主体形成、市民参加のシステムとして出来上がりつつあるのも、島の人のホスピタリティだけでなく、ハート・アートおかやまの皆様が、これまで4年間、じっくりと時間をかけて島の人たちと関係を構築してきたからこそ。
どこでも皆が声をかけて下さる。困ったことがないかと聞いて下さる。お爺さんがアーティストに「先生のおかげです」と深々とお辞儀をする。地域の人とアートリンクが強い信頼関係で結ばれている場面に何度も遭遇しました。

滞在期間はちょうどお盆にあたり、島の盆踊り「白石踊り」を存分に踊らせていただきました。白石踊りは源平合戦の口説きのもとに12種類の踊りを一斉に踊るという珍しさから国の無形重要文化財に指定されている踊りです。
やぐらを組むのも、交替で口説き、輪になって踊るのも、世代を超えて皆で作って皆で楽しみ受け継いでく。暮らしの中心に文化があり、文化が時間を超えて魂と魂を結びつけるものでした。
「この島では、60歳がまだまだ青年じゃけぇ。」白石島滞在初日、やぐらにきたのは60歳、70歳と見受けられるおじいさん、おばあさん。思わず「みなさんお元気ですね」と問いかければ、「島は生涯現役なんよ」との答えが返ってきました。
滞在期間中、テレビでは大女優の孤独死・元アイドルのゴシップが伝えられる中で、魂が結びつけられる「島のオルタナティブな生活」が、断片化が進む現代にとって1つの答えのような気がしてなりませんでした。

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さて冒頭部の問い「いいアートの基準はなんですか?」86歳の真鍋禮三さんに初めて会ってからの問い。んん~こうした根本的な問いすら、私は考えたことなかったかもしれない。しどろもどろしていると、禮三さん「わしもいろいろ本を読んだが、わからんのじゃ」。禮三さんとお話していくうちに、導き出されたのは、「良いアートは、作品を見てその人に会いたくなる」ということ。「でも、正直まだよくわからんことでいっぱいじゃ」そう話す86歳は、85歳を超えてからピアノを習い始めたという。始めて2年。今は学生時代に憧れた「ボレロ」を練習している。

企画間交流プログラムを通じて、草を刈り、砂を運び、働いた後のスーパードライの美味しさが身にしみた岡山アートリンクの制作現場。思えば汗を流した日々は、だいぶ前から口にしなくなってきた、忘れかけていた「思い乱れる夢」を再び描きたくなる日々だった。白石島でも、真鍋島でも地域の人と、「これから」を話した。アートリンクセンターの湯月さん、丹正さん、真部さん、田野さんとも、「夢」を話した。そしてアートリンクの作品には、人の思い、夢や希望が実現している。
誰かと会いたくなる、誰かに自分と家族のことを話したくなる、そして一緒にいる人の希望を実現したくなる―そんなアートプロジェクトの力をメリメリと感じ入った企画間交流プログラムでした。
ハート・アート・おかやまの、湯月さん、丹正さん、真部さん、田野さん、また白石島の天野さん、真鍋島の真鍋さん、そしてAAF実行委員の皆様はじめ、たくさんの学びの場を下さった皆様に心から感謝し、この夏の企画間交流プログラムを今後の自身の糧としたいと思います。


<企画概要> 
企画名:「つくりてをつくる!」(千葉→岡山) 
実施日:2009年8月7日(金)〜15日(土) 
企画者:コミュニティアート・ふなばし(千葉)、ハートアートおかやま(岡山) 


〈タイムテーブル〉
全日:制作現場作業、島の行事のサポート

  • 8/7(金):白石島に到着、到着後展示会場となる空き家の清掃作業、砂時計に使う砂を浜辺で土能袋に詰める。白石島公民館にて白石踊りの練習に参加。
  • 8/8日(土):午前中、真鍋島に移動し、やはり展示会場の空き家の掃除。休憩時間で、島の学校や寺などを見学。真鍋島の路地にのぼりを立てて歩く。夕方、白石島に帰り、他のアーティストたちと合流。海で汗を流した後、白石島の人にもらった魚のすり身でさつま揚げを作って食べた。
  • 8/9日(日):雨の中、白石島の各所にのぼりを立てる。製塩をするペアや、蝋燭でレゴブロックを作るペアのドキュメントを撮る。公民館長の天野さんに開龍寺を案内される。夜、浜辺で自主的にキャンプファイアーする。
  • 8/10日(月):猛暑の中、展示会場となる畑の草刈。夕方から踊りの練習。
  • 8/11日(火):草を燃やす。すごい量。
  • 8/12日(水):小屋をつくるというアーティストと一緒に竹を取りに行く。田野と白石島が見渡せる「はと岩」に登る。土能も無事運び終えた。夕方、撮影の関連の入江さんが東京から見学に来られる。
  • 8/13日(木):真鍋島の禮三さんを訪ねる。
  • 8/14日(金):午前、アーティストの作品制作で竹を組む。午後、就職活動の結果を船着き場で見る。受かっていて、島の人から拍手。白石踊りを4時間踊り続けた。島の人が笑いながら、あきれながら、山浦さんの踊りの所作を直そうと近づいてきては、一緒に踊った。
  • 8/15日(土)朝一番の船で帰る。

〈執筆者プロフィール〉

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山浦彬仁(コミュニティアート・ふなばし事務局長)
筑波大学教育学4年生。01年、中学3年時に友人と情報誌を創刊し以後9年間「市民参加」に関心を寄せてNPOに参加。何かに出会い、共に話す為の映像祭・コミュニティアート映像祭の企画を担当。