とがびにお邪魔して
きのう、とがびアートプロジェクト2006に行ってきました。長野は良い天気なのですが、信越線のどこかで大雨が降っているらしく、ちょっと電車も遅れたりで、戸倉上山田中学校に着いたのは午後3時くらいになってしまいました。キッズ学芸員による公式の「とがび丸見えツアー」は終わっていたのですが、先回同様、キッズ学芸員の鈴木里沙さんがアテンドしてくれて、校内を丁寧に案内してくださいました。彼女は実行委員長として忙しいわけで、本当に申し訳なかった。ありがとうございます。
キッズ学芸員がアーティストを選び、一緒につくった作品が21作品、その他に高校生の作品や中学校3年選択美術生徒の作品、特別展やパフォーマンスなどもあるから、全部で50作品近くが校内に点在しています。まず、連れて行かれたのが門脇篤さんの「温泉祭りプロジェクト」の部屋。80年以上の歴史を持つこの地の温泉祭りと花火大会を主題にした作品でした。しかし、東鳴子のGOTEN GOTENアート湯治祭をはじめとして、AAF2006における門脇さんの活躍はほんとうにすごいなあ。彼のエネルギッシュな活動がいろいろな地域、いろいろなプロジェクトをつないでいく様を目の当たりにして、AAFの可能性を確信するのです。
それから校舎を上に行き、下に降り、長い廊下を歩き、次々に教室を訪れる。2時間近く見て回りました。とがびアートプロジェクトの面白さは、中学生たちが自分の作品を展示するのではなく、「学芸員」として関わったことでしょう。だから、ただの中学校の文化祭ではないのです。キッズ学芸員にしても、自分の作品発表だけなら、勝手に自分でつくりたいものを制作していればいいわけだけど、学芸員として関わるから、個々のプロジェクトを成立させるために、いろいろな「社会」と関わらざるを得ない。そこで得る経験の多様さと幅は、ただの作品発表会では絶対に得られないものだったと思います。
それぞれの作品についていえば、予算や時間やスキルが厳しく制限されたなかでみんな精一杯努力していたと思うし、なかにははっとする作品もありました。個人的にいえば、圓井義典さんやROBOさんが学芸員たちと制作したインスタレーションは中学校というサイトの必然性もあり、見事でした。写真はROBOさんの「元色(げんしょく)」。また、観客の参加の仕方に関して、ぼくのような展覧会ディレクターが参考にできるなと思ったやり方もいくつかありました。中学生のやり方に習うなんて、ちょっとわくわくしますね。
学校を出て駅に向かうと、八百屋さんの店先に、あまり見たこともない山のきのこが並んでいる。きのこは大好きだから、いろいろ買い込んでしまいました。そしてひとり、戸倉駅のホームで電車が来るのを待つのですが、山の上に広がった夕空いっぱいに雲が流れている。風はすでに秋の風です。案内してくれた里沙さんが、最後にそっと、私はここがお気に入りだと、彼女の友達たちがつくった「初恋(ういれん)」という部屋に連れて行ってくれ、そこはいかにも少女たちのたまり場のようなしつらえの薄暗い一室でした。そのことを思い出し、ついぞ忘れていた言葉にならない感情が胸の底の方からこみ上げてきます。もう二度と戻れない、若さへの嫉妬かな?(笑)
キッズ学芸員たちは、本当に貴重な経験をしたと思います。いつかは彼らもまた、そのことを懐かしく振り返ることもあるでしょう。ぼくにとってもすてきな一日でした。



