夏の旅

門仲天井ホール向井山朋子さんの「夏の旅」がはじまりました。
あらかじめつくられた音のコラージュ。これは、「夏の旅」がこれから回っていく東京、仙台、山形、岩手、札幌の、そこに住む人々が集めてきたさまざまな街の音を、彼女が大胆にリミックスしたものです。コンサートでは、この音のコラージュが、シューベルトの「即興曲」やシミオン・テン・ホルトの「カント・オスティナート」といった曲に重ねられ、彼女自身のプログラムノートによれば、「わたしのシューベルト」が生まれていくのです。それは、いま現在の私たちが生きる現場の音を混入させ、「金字塔のような「古典作品」をすこしだけ」自分に引き寄せてみる試みであり、向井山さんはいかにも彼女らしいやり方で、シューベルトへの敬愛を表現したのでしょう。聴いているぼくはどうだったかと言えば、刻々と姿を変えていく東京の夕暮れと夜が、縦長の窓から垣間見られる門仲天井ホールの空間のなかで、最近身に起こったさまざまなことがらの思い出や感情が、現れては消え、現れては消えていきました。まるで打ち寄せる波のように。
演奏の後には後藤繁雄さんとのトーク。写真はその様子です。(事務局・芹沢)