AAF2008地域間交流プログラム「現役の学校で行なうアート展の実践と展開について」シンポジウム
各地域間の自発的な交流を促すために、AAF2006より実施している”地域間交流プログラム”。
各地の現場やまちの空気にふれながら、担当者同士、あるいは実行委員と担当者がお互いの現状をゆっくりと話し合い、アイデアやノウハウの交換を行う交流の場が全国各地で生まれています。
AAF2008の交流支援プログラムの第2弾として、学校を舞台にした2つの参加団体。八尾スローアートショー2008とながのアートプロジェクト2008のレポートをお送りします。
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14:30~開会挨拶(教育振興会会長)、趣旨説明(行政センター担当者)、山口氏(建築家、八尾スローアートショーコーディネーター)の紹介後、「八尾スローアートショー」のこれまでの実践報告が行われた。
今年、2008年で5回目となる「八尾スローアートショー」。そのきっかけは、2004年八尾地区の中山間地域にあった木造廃校舍の視察に始まる。山口氏にとって、空間的にも魅力ある校舎が「宝」のように思えたという。既に廃校舍であった旧下笹原小学校で2年間アート展「八尾スローアートショー」を行ったのち、2006年から舞台を現役の小学校である樫尾小学校(富山市最古の木造校舎)に移した。なお、その間に、八尾地域に7校あった木造校舎はこの樫尾小学校のみになってしまった。
八尾スローアートショーのプログラムは、①芸術家とのワークショップ、②八尾旧町内にある半空家を利用したアーティスト・イン・レジデンス、③木造校舎での展覧会の3つを主としてきた。それらを写真を交え説明。一方で、現役の小学校で開催したことから行った2006年の在校生とのワークショップが、子どもたちにとって貴重な体験となり学校側からも教育上有意義であることが認められ、新たに「教育」という軸が加わったことに大きな可能性を感じているとし、ますます多様な価値観が支持を得る社会で、画一的な教育の場だけでなくこうした試みを行なう学校に希望を持つと述べた。この小学校は2009年1月から近くに建設された新校舎へ移る。だが、いわゆる廃校とは違い、地域から学校という「機能」がなくならないことは地域づくりに重要であると続ける。地域からソフトとしての「学校」が無くならず、父兄たちも通った、時代を経たハードとしての魅力ある「校舎」も在る。それは地域にとって大変幸運なことでありこの現校舎を有効に利用することで、中山間地域における持続可能な創造性ある地域づくりを目指したい。そうした願いを込めて副題を「地域とアートと学校と」としたと結んだ。
【中平氏による講演】
山口尚之氏の講演後、長野市立櫻ヶ岡中学校教諭・中平千尋氏による、とがびアートプロジェクトの実践報告が行われた。「年がら年中美術館。」のコンセプトで進められているとがびアートプロジェクトは、生徒主体で、アーティストと生徒が共に作品を制作、公開。さらに、ときには地域の人たちに協力を仰ぎつつ作品をつくりあげるプロジェクトだ。このような制作過程を通じ、ぶつかったり連携したりする人間関係を体験し、その中から学ぶことも多い。
中平先生は、このプロジェクトで最も大切にしているのは、生徒に「自分たちで決めさせる」ことだという。生徒が自分で目標を決め、「キッズ学芸員」という名で、プロジェクトの企画、作家選定、展示開催時の作品説明をすることにより、地域の人たちとのコミュニケーションを生み出し、学校+作家+地域を実現しようとしている。
中平先生は、生徒たちにとって1番大切なのは、人と出会うことだと続けた。とがびアートプロジェクトでは、アーティストと共に作品を作り、発表する場を作ることで、「見せたい」「教えたい」など、コミュニケーションをとりたくなるような状態を作っている。
地域の人たちからは、「一生懸命にやっている生徒の姿がいい。」という意見が多いという。
最後に流されたDVDでは、とがびアートプロジェクト開催中に、信濃美術館学芸員、生徒、一般来場者、視察に訪れていた文部科学省(肩書きはDVDで確認!)の方が、各々の意見を交換する場面が紹介された。アートを軸に、学校の中でこんな形のフラットな対話が起こるのも、とがびアートプロジェクトの非常に貴重な一面である。
【意見交換会風景】
1. 閉会のあいさつ(教育振興会副会長)後、校長室にて地域住民代表、PTA、樫尾小学校校長、中平千尋、中平紀子、塩川岳、山口尚之を中心に、八尾スローアートショーについての意見交換会が行われた。
※ 八尾スローアート参加作家等を含む参加者:約20名
山口が、八尾スローアートショーととがびアートプロジェクトの違い、八尾スローアートショーについての意見を問いかける。
中平:とがびアートプロジェクトと、八尾スローアートショーの違いは、生徒が主体かどうかというところだと思う。とがびアートプロジェクトは生徒主体を大切にしている。スローアートショーは、美術のみならず、音楽やダンス、建築などいろんな分野の芸術を展示している点がいいと思う。子供たちに様々な分野の作品を見せたい。
塩川:八尾スローアートショーととがびアートプロジェクト、両方に参加している中で感じる違いは、まずは小学校(図画工作)と中学校(美術)の違いが大きいです。図画工作は「学ぶ」という側面が強い感じがしますが、美術というと、広い意味で「面白いもの」という感覚があります。
地域住民:現代芸術については、正直よくわからないところがある。けれども子供が楽しんでいることが大切。
中平:芸術がよくわからなくても、生徒に「おもしろい」「やってみたい」と思わせることが大事。とがびアートプロジェクトでは、以前、皆の記憶に残っている、ある魅力溢れる昔の美術の先生の作品を展示する企画を行いました。すると、その先生に習った方たちが鑑賞しに来られ、地域の方々を巻き込むプロジェクトになりました。そこから学校の生徒たちと地域の方々の交流も生まれます。とにかく、生徒たちにとっては、人と出会うことが大切。
山口が、7/4にワークショップを行った米田(美術家)に感想を尋ねる。
米田:未来の人になって樫尾小学校を発掘する、というワークショップを行いましたが、想像以上に子どもたちが、その世界に入り込んでいました。そんな子どもたちの様子を見ていると、やはり、八尾スローアートショーを通して、アーティストとの関わりを持つという経験を積んでいるからなのではないかと思いました。アート展を通して、作品や人とたくさん出会えること、それは、たくさんの情報を得る以上に大切なものとなっているのでは。まさに、人と出会いコミュニケーションをとりたくなる場をつくることが、八尾スローアートショーの最大の魅力なのではないでしょうか。
山口:もっと、悪い意見でも八尾スローアートショーに対しての意見をお聞きしたいです
地域住民:折り紙など、来た人がアーティストと一緒に何か作れるような仕組みもあるといいと思う。アーティストと子供が一緒に作品を作って(直接会って話をして)影響を受けるのはとてもいい。
最後に、地域の方より、「樫尾(黒瀬谷)ってどんなことろなの?」と聞かれたときに、この八尾スローアートショーをやっているところだということで、特長を伝えられるようになってきたという意見が出た。他の地域との差別化が生まれ、しかも、普段は村の人しか通らないところに、アート展の期間には他の土地からたくさんの人が足を運んでくれることが嬉しい、と。
地域の方たちは八尾スローアートショーを好意的、前向きにとらえているようで、児童たちがこのようなアートを通した貴重な体験をすることで、その後の将来に必ず有意義なものになるとお話されていました。そう語ってくださった方も、幼い頃に、通っていた田舎の中学校にオーケストラがやってきて、その音楽に感動したことは今も忘れないものだと。もしかしたら、将来このプロジェクトに関わった小学校の児童たちの中から芸術家が生まれるかもしれない、などといった楽しい未来予想図の話もあがっていました。
地域づくりにアートが有効であることがある程度認められつつある社会状況のなか、両プロジェクトとも、地域とアートに加え「学校」が介在している点が共通していて且つ、重要な要素だと感じた。「中学校」と「小学校」の違いがあるが、「学校」側にとっては外部からの刺激といった特徴ある教育を行なう利点があり、「アーティスト」側からは新たな表現手段として魅力的な試みであり、「地域」側の視点に立てば貴重な地域資源の有効活用の事例となる。このように「地域」「アート」「学校」が相互補完的に作用し合い、中山間地域における持続可能な創造性ある地域づくりを探る上で有意義なプロジュクトとなることを望む。
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[企画名]八尾スローアートショー2008
「現役の学校で行なうアート展の実践と展開について」
[実施日] 2008年7月6日(日)14:30 ~ 16:00
[招聘者]中平千尋(長野市立櫻ヶ岡中学校教諭)
中平紀子(長野市立戸倉上山田中学校教諭)
[意見交換会ゲスト]塩川岳(現代美術家)
[コーディネーター]山口尚之
[参加者]約110名(学校PTA、樫尾地区住民、八尾スローアートショー実行委員及び関係者、その他一般参加者)
タイムテーブル
14:30~14:50 「八尾スローアートショー」のこれまでの実践報告 (山口尚之)
学校PTA、樫尾地区住民、八尾スローアートショー実行委員及び関係者、その他一般参加者に対し、「八尾スローアートショー」の今までの実践報告をした。
15:00~15:40 「とがびプロジェクト」講演 (中平千尋)
これまでの「とがびプロジェクト」の実績を報告していただく中で、生徒たちの中に見受けられた影響や、地域の方々との交流について具体的にお話をして頂いた。
15:40~15:50 質疑応答
16:00~16:30 質問、及び意見交換会
学校PTA、樫尾地区住民、八尾スローアートショー実行委員及び関係者が集い、八尾スローアートショーについての意見交換が行われた。
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<執筆者プロフィール>
高村 瑞世
1985年 静岡県生まれ。
駒沢女子大学空間造形学科卒業。2007年~2008年㈱16アーキテクツ勤務。
「八尾スローアートショー」には2008年より参加。