コラム各地からの「もの」便り

vol.11

『屋形船』

柳川安代さん(四万十川国際音楽祭実行委員会)
四万十の音 風に乗り 波にゆられて 夢の散歩高知県四万十市

コラム写真
四万十川は日本最後の清流と呼ばれています。でも昔は暴れ川と呼ばれ迷惑の代名詞のような川だったようです。台風の度、氾濫して大水が出ていました。でも屋形船でゆったりと川下りをすると暴れ川の異名を忘れてしまいます。これまで多くの方々をご案内しましたが、屋形船に乗るたび私自身が癒され幸福感にひたっているのを感じます。

そして、私が一番こだわる屋形船は船大工の加用さんの『船辰』がお勧めです。船はもちろんのこと、ゆったり流れるひと時静かに船を漕ぎ、川の隅々まで熟知した加用さんは川の悲鳴を的確に語ってくれます。その語りには私たち共通の現代の不安をも感じることも出来ます。

さて、四万十川国際音楽祭は、四国の端っこの小さな地域で、市民と行政が中心になり毎年夏から秋にかけて緩やかに開催しています。多彩なゲストもその都度招聘しますが、この音楽祭の魅力は人と人との交流とこの川の魅力でもあります。自然のまま蛇行しながら流れる清流は、約束事の多い窮屈な生活を余儀なく強いられている我々に、安らぎと自然の力を強く感じます。ここは護岸工事もダムもありません。台風の度、私たちを不安にさせながら、人間の力の微力さを見せ付けます。そんな四万十川で夏はビールを、冬は火鉢を入れ、また蛍を、花火を屋形船で楽しみます。日々の悩みはちっぽけなものに思えます。

いつか何艘かの屋形船を浮かべ「水上の音楽」を夢見ています。小さな小さな水上の音楽祭を一緒に夢見ませんか。
きっと今年のタイトル『四万十の音 風に乗り 波にゆられ 夢の散歩』になることでしょう。




柳川安代
1991年特定非営利活動法人なかむら音楽振興会設立。1994年四万十川国際音楽祭実行委員会事務局長。「ひと」と「酒」の好きな団体で私もその中の一人です。
柳川安代さん