コラム各地からの「もの」便り
vol.4
『島の空気、島の時間』
昨年の夏、「外浜まつり」となる前の海中展覧会「アクアート2006」に観賞者として、私は西ノ島を訪れました。そのことがなければ今回の参加には至らず、ここで自分の言葉を発することもなかったでしょう。まったくもってものごとのつながりは予測不可能です。ひとり頭の中であれやこれやと思い巡らすだけでは何も変わらないけれど、わずかでも外に向かって素直にアクションを起こせばつながった歯車はカタコトと面白いように動き出します。
参加を決めてから下見や準備などのためにその後二度西ノ島へ足を運びましたが、その度に何とも言えない不思議な感覚にとらわれます。私の住む街からバスや電車を乗り継ぎ、港からフェリーに乗り込み波に揺られ辿り着く日本海に浮かぶ島まで、その間には物理的な距離、移動に掛かる実質的な時間、それ以上に測れない差異が感じられるのです。
わずか数日間の滞在後、大阪へ戻るといつも当たり前に過ごしている場所のはずなのに何か違和感の様なものを感じます。空気の重さに息苦しささえ覚えます。さらに島での一日と街での一日、同じ24時間のスピードが違うのです。浦島太郎のようなこれらの感覚はどうも私だけのものではないようです。
この世に私たちが存続するうえで絶対切り離せない空気と時間。
なのに普段意識することもない空気の密度と時間の流れ。
それを改めて意識させてくれる島の空気と島の時間。
今私たちが生活している社会は、自分の身体や心で確かに実感すること、その大切さが見失われて仮想の世界が大きく幅を利かせています。お金や情報という間接的なものに支配され、直接的な関係は疎まれ希薄になり忘れ去られようとしています。しかし本当の意味での人やものと場のつながり、それはやはり実際にその場の空気と時間とあいまって生まれて来るはずです。
この夏、島の空気、島の時間を潤滑油にしてそれぞれの参加者という歯車はどんな動きを見せるのでしょう?そして絡み合った歯車たちはどんなリズムを外浜に響かせるのでしょうか?
その場に立って確かめられることを嬉しく思います。
- かわいゆかこ
- 1970生まれ。大阪在住。造形作家。ハンドメイドフェルトを中心に天然繊維素材や原始的技法にこだわり制作を続けています。今回外浜まつりアクアート合宿では、隠岐西ノ島で素材調達から制作、展示後の解体まで作品に関わることをすべて島内で完結させる予定。