『地域を変えるソフトパワー』

メセナアワード 2012メセナ大賞受賞! 生活者の主体性を引き出す活動だ。— 山崎亮

藤浩志 AAFネットワーク 著 地域を変えるソフトパワー
アートプロジェクトがつなぐ
人の知恵、まちの経験

2012年12月刊行

発行:青幻舎
定価:(本体1,800円+税)
判型:四六判/総頁:256頁
ISBN:978-4-86152-377-9 C0070

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東日本大震災が起きる以前から、地域社会の疲弊に対して多くの振興策が実施されてきた。しかし、それらはじゅうぶんな成果を上げられなかった。公共事業による箱モノ行政や、大規模商業施設の誘致がいっときのカンフル剤として機能したとしても、高度成長期より徐々に進んできた地方の過疎化と大都市への一極集中は食い止められず、地域社会は疲弊したままである。

そうしたなか、新たな地域再生の試みが少しずつ成果を上げ始めている。多様な地域資源を再活用し、人々のコミュニケーションを応援し、2000年以降地域コミュニティ再生に不可欠な存在として浮かび上がってきたのが、アートプロジェクトである。このアートを社会に開く活動は、地域における小さな拠点開発に長けており、大規模の施設を必要とせず、最小の投資を最大限に活かすことができる。私たちは、全国の様々なアートプロジェクトが備えているそんな機能を、「ソフトパワー」と名付けてみたいと思う。

地域に暮らす、あるいは関わる人々の「もやもやとした思い」を受け止め、様々な実践へと展開していくこと。着実に成果を生んでいる各地の取り組みを取材し、一つひとつ紐解いてみたい。柔軟な社会変革、だからソフトパワーなのである。

もくじ

まえがき 藤浩志

1 地域の課題へ はじめの一歩

case 1
商店街のシャッターを開けるには? 沖縄・コザ「銀天街商店街」の場合
case 2
課題は過疎だけじゃない――コミュニティの都市化というジレンマ
滋賀県・近江八幡のほんがら松明保存活動
case 3
創造的な過疎をつくろう! 徳島県・神山町「グリーンバレー」の取り組み
case 4
離島に交流を生むしくみをつくるには?
にぎやかな「外浜まつり」が繰り広げられる隠岐島・西ノ島町
case 5
日雇い労働のまちで人の心をつなげていく 大阪・釜ヶ崎「ココルーム」の取り組み

2 多様性を受け入れるまちづくり

case 6
障がい者支援から寛容性ある社会づくりへ
浜松のプロジェクト「クリエイティブサポートレッツ」
case 7
学校は「教わる場」じゃなくて、「学ぶ場」なんだ!
中学校が美術館になる、長野県・戸倉上山田中学校
case 8
地域の孤独な人と人をつなげるには? 岡山「ハート・アート・おかやま」
case 9
多国籍なまちで、コミュニティの交流は生まれるのか? 横浜・若葉町「ART LAB OVA」

座談会 「アートプロジェクト」と「まちづくり」の違いって?

藤浩志 x 田北雅裕 x 茂木綾子

田北雅裕(たきた・まさひろ)
九州大学大学院人間環境学研究院専任講師。1975年生まれ。
2000年、学生の傍ら「まちづくり」を切り口としたデザイン活動 trivia を開始。04年に杖立温泉街(熊本県小国町)に移住。まちづくり機関「杖立ラボ」を設立し、住民の立場から景観整備や、地域ブランディング事業、各種イベント企画等に取り組む。09年4月より現職。

茂木綾子(もぎ・あやこ)
写真、映像作家。1969年生まれ。東京芸術大学デザイン科中退。97年からミュンヘン在住後、06年スイスにて4年間のアートプロジェクト「ラボラトワー・ヴィラージュ・ノマド」の企画運営を担当。09年淡路島に移住し、廃校を拠点とした交流の場をつくるアートプロジェクト「ノマド村」を展開中。

3 人と人、まちとまちをつなげるしくみ

case 10
国際的なアートのお祭りを一からつくり上げる 大分県・別府「BEPPU PROJECT」
case 11
市民主導の行政施設の試み 青森県・八戸ポータルミュージアム「はっち」
case 12
地域の物語をつむぐ 地元の人々を主役にする、宮城「ENVISI」の取り組み
case 13
震災に向き合って いわきでつながる人々
case 14
全国に広がる「ソフトパワー」の波 淡路島、神戸、向島のプロジェクト

コラム

アートプロジェクトとは何か? 地域の課題を創造的に乗り越えていく方法 芹沢高志

地方のまちと企業メセナと、40代半ばの奮闘 荻原康子

アサヒ・アート・フェスティバルはなぜ誕生し、何を生み出しているのか 加藤種男

芹沢高志(せりざわ・たかし)
東京生まれ。1989年、P3 art and environment を設立。以後、現代美術、環境計画を中心に、数多くのプロジェクトを展開している。AAF事務局長。「デメーテル」(2002)総合ディレクター。「横浜トリエンナーレ2005」キュレーター。「混浴温泉世界」(2009、2012)総合ディレクター。

荻原康子(おぎわら・やすこ)
「アーカスプロジェクト」(茨城県)など複数のアーティスト・イン・レジデンスの調査・運営に関わった後、INAX文化推進部に所属。96年よりキュレーター・オフィスで美術展の企画・運営等に携わり、01年に企業メセナ協議会入局。「メセナアワード」『メセナnote』、セミナーやコーディネート事業を担当。11年より事務局長。

加藤種男(かとう・たねお)
公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団顧問
AAFはじめ、近年のアサヒビール文化活動のすべてにかかわる。また、わが国の企業メセナ活動をリードし、現在企業メセナ協議会専務理事を兼務。NPO活動の推進にも取り組み、アートNPOフォーラムの創設に参加。文化芸術創造都市横浜などの「創造都市」の旗振り役として、横浜市芸術文化振興財団専務理事などを歴任。こうした活動により、08年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

年表

コミュニティとアートを巡る変遷 —— 市民・NPO・企業メセナと社会

あとがき 藤浩志

関連資料

「編集作業をオープンにする」/アサヒ・アート・フェスティバル2012 参加プロジェクト・団体一覧/アサヒ・アート・フェスティバル参加団体(一部企画名)一覧(2002-2012)/AAFネットワークの軌跡 など

ウェブサイト

AAFのアーカイブは、公式サイト上で展開中。
本書籍に取り上げている事例のほか、数多くの事例が紹介されています。

http://www.asahi-artfes.net

著者プロフィール

撮影:菱沼勇夫
藤 浩志(ふじ・ひろし)
美術家・藤浩志企画制作室代表・十和田市現代美術館副館長 1960年鹿児島生まれ。京都市立芸術大学大学院在学中、地域での表現活動を志向し京都情報社設立。京都中心市街地や鴨川を使った「アートネットワーク’83」の企画以来、全国各地で美術類のデモンストレーションを実践。同大学院修了後、青年海外協力隊員としてパプアニューギニア国立芸術学校勤務。都市計画事務所勤務を経て、92年藤浩志企画制作室を設立。地域資源・適正技術・協力関係を活かした「対話と地域実験」を重ね、数多くのアートプロジェクトの立ち上げに関わる。現在、福岡県糸島市在住・青森県十和田市単身赴任中。
http://geco.jp
AAF ネットワーク
市民がアートの力で地域の未来を切り開こうとするプロジェクトのネットワーク。2001年に全国の市民グループやアートNPO、アサヒビールなどが協働で立ち上げ、02年より「アサヒ・アート・フェスティバル(AAF)」を主催。現在は、全国およびアジアとのネットワークを形成し、たがいに議論を深めるための講座やCafe、実践的なアートマネジメント学校「AAF学校」、データベースを活かしたアーカイブや検証手法の開発など、通年にわたり多彩な活動を展開。月一回の定例会議やメーリングリスト、全国から参加者が結集する拡大実行委員会など、リアルな交流を続けている。
※2012年4月、アサヒ・アート・フェスティバル実行委員会より改称
http://www.asahi-artfes.net/